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日外会誌. 94(10): 1100-1107, 1993


原著

Ag-NOR による胆囊病変の粘膜上皮増殖能の評価

岩手医科大学 病理学第1講座(主任:佐々木功典教授)

須藤 隆之

(1992年5月7日受付)

I.内容要旨
先天性胆道拡張症と膵管胆道合流異常のいずれも合併していない胆嚢結石症20例,膵管胆道合流異常を合併した先天性胆道拡張症10例,先天性胆道拡張症を合併していない膵管胆道合流異常合併胆嚢結石症4例,胆襄腺腫5例,胆猫癌32例,合計71例の胆嚢疾患を用いて,Ag-NOR (silver stained nucleolar organizer region proteins) を測定し,種々の胆嚢疾患における病理組織診断への応用,さらに胆嚢癌症例においては,従来の臨床病理学的事項との関連,悪性度の指標,予後因子としての可能性を検討した.
1. 胆嚢癌では,いずれの良性疾患に比べても,Ag-NOR数が有意に高値を示し,Ag-NOR数は,胆襄良性疾患と胆嚢癌との鑑別診断の一助となると考えられた.
2. 癌症例の壁深達度とAg-NOR数は,密接な関係がみられ,漿膜に達する症例では,そうでない症例に比べて高いAg-NOR数を示した.
3. リンパ節転移陽性例は,陰性例と比べ,予後不良例は,予後不良例と比べて,Ag-NOR数が高値の傾向を呈したが,有意な差を認めなかった.
4. 組織型では,pap例のAg-NOR数は,tub2,asのそれに比べて,有意に少なく,tub2,asに比べてpapの増殖能,生物学的悪性度の低い事が示唆された.
5. 平均Ag-NOR面積では,各胆嚢疾患間,癌症例の深達度,リンパ節転移の有無,組織型,予後いずれとも相関しなかった.

キーワード
Ag-NOR, 胆囊癌, 胆囊腺腫, 先天性胆道拡張症, 膵管胆道合流異常

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