[
書誌情報]
[
全文PDF] (810KB)
[会員限定・要二段階認証][
検索結果へ戻る]
日外会誌. 94(10): 1092-1099, 1993
原著
肝細胞癌肝内転移と肝類洞細胞からのフリーラジカルに関する研究
I.内容要旨肝細胞癌の再発は,肝内転移の様式をとるものが主であり,多くが経門脈的である.しかし門脈内及び類洞内に流入した,腫瘍細胞の全てが生着増殖し転移巣を形成するわけではなく,転移巣形成には腫瘍側の因子と宿主の防御系の因子が関係する.ラット肝癌転移モデルを用いて肝類洞細胞が持つ転移制御能について検討し以下の結果を得た.
ラットは6週齢雄のドンリュウラットを用い,腫瘍細胞は可移植肝癌継代株AH130を使用,肝転移モデルは1×10
6個のAH130細胞を門脈内へ注入し作製した.
1) この肝転移モデルに各種薬剤による前処置を加えると,シリカ前投与により転移個数は増加し,β1-3 glucan前投与により減少した.またLiposomal SOD,Catalase前投与により肝転移個数は増加した.
2) Pageらの方法に準じてラット肝より肝類洞細胞を分離し,ルシフェリン存在下の化学発光(Chemiluminescence)法により,フリーラジカル(スーパーオキサイド)産生能を測定すると,腫瘍細胞の存在により産生が確認され,腫瘍細胞投与時に測定された肝類洞細胞からの化学発光はβ1-3 glucanをラット血清とincubationしたsera-β1-3 glucanで剌激すると増加し,フリーラジカルスカベンジャーにて抑制された.
3) SOD活性は肝組織では豊富であり,腫瘍細胞では低値を示した.
肝組織の電顕による観察では,シリカ投与によりクッパー細胞のシリカ貪食による膨化がみられた.
すなわち,肝類洞細胞をシリカにより不活性化すると転移個数は増強し,肝類洞細胞よりのフリーラジカルをSOD,カタラーゼ等のラジカルスカベンジャーで減弱させるとシリカの効果と同様,転移個数は増加した.またβ1-3 glucanの転移抑制効果は,肝類洞細胞のフリーラジカル産生能を増強した為と考えられた.以上肝転移生着の早期においては,肝類洞細胞からのフリーラジカルが防止機構の一端をになっていることが示唆され,それらの活性化が癌治療において有効である可能性が示唆された.
キーワード
肝細胞癌, 肝転移, フリーラジカル, AH130, Cheiluminescence
このページのトップへ戻る
PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。