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日外会誌. 94(9): 1000-1007, 1993


原著

ヒト残胃粘膜におけるオルニチン脱炭酸酵素 (ODC) 活性の測定とその臨床的意義

久留米大学 医学部外科学第1講座(主任:掛川暉夫教授)

安元 健二

(1992年6月5日受付)

I.内容要旨
オルニチン脱炭酸酵素(ODC)活性が,残胃発癌リスク判定の生物学的指標として臨床的に利用できるか否かについて,幽門側胃切除後20年までの残胃症例45例の粘膜内ODC活性を測定し検討した.その結果,非切除胃の胃炎に比べ,胃切除後の残胃(炎)では,有意に(p<0.01)高い値を示した.残胃のODC活性は,吻合部粘膜ではその他の胃上部粘膜より(p<0.01)高い値を示した.また,再建法別ではRoux-Y法群やBillroth-I法群に比べBillroth-II法群で(p<0.05)より高い値を示し,術後経過年数ではBillroth-I法群では術後15年までに徐々に低くなっていくのとは対照的にBillroth-II法群では経過と共に徐々に高くなっていく傾向を示した.ODC活性測定と同時におこなった生検残胃粘膜の組織学的検討では,吻合部粘膜は胃上部粘膜に比べ萎縮性過形成胃炎の像を多く認め(p<0.001),とくにBillroth-II法群に著明であった.また,萎縮性過形成胃炎の像を示した群では化生性胃炎の像を示した群に比べ胃上部および吻合部粘膜とも,より高いODC活性値を示した.以上の結果より,ヒト残胃粘膜のODC活性は一連の残胃環境の中でも,とくに十二指腸液胃内逆流および萎縮性過形成胃炎と強く関連するものと推定され,残胃発癌リスクの高い粘膜ないしは個体を検出するうえで重要かつ有効な生物学的指標のひとつになりうると考えられた.

キーワード
オルチニン脱炭酸酵素, 残胃炎, 残胃癌, 発癌

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