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日外会誌. 94(9): 988-992, 1993


原著

成長因子,核増殖抗原からみた表層拡大型胃癌と深層拡大型胃癌の比較検討

久留米大学 医学部第1外科

孝冨土 喜久生 , 橋本 謙 , 児玉 一成 , 青柳 慶史郎 , 大田 準二 , 武田 仁良 , 掛川 暉夫

(1992年4月27日受付)

I.内容要旨
1986年から1990年までに切除した表層拡大型胃癌(腫瘍長径が8cm以上の末分化型早期胃癌Ilc)15例と深層拡大型胃癌(深達度seで間質量がスキルスの未分化型胃癌)25例の生物学的特性の差異を明らかにする目的で,成長因子(EGF,EGFR,TGF α),核増殖抗原(PCNA)について免疫組織学的に両者を比較検討した.EGF,EGFR,TGF α陽性率は,表層拡大型が20%,7 %,27%,深層拡大型が60%,56%,76%で,深層拡人型が有意に(p<0.05)高かった.また,PCNA腸性癌細胞の占める比率が癌細胞全体の60%以上の高度陽性例も表層拡大型が1例(7%),深層拡大型が19例(76%)で,深層拡大型が有意に(p<0.001)多かった.EGF(+)またはTGFα(+)で,かつGFR(+)であった症例は,表層拡大型が1例(7%),深層拡大型が13例(52%)で,深層拡大型が有意に(p<0.05)多く,深層拡大型の進展に“antocrine’'機構の関与が示唆された.また,表層拡大型でみられた定型的な印環細胞は,成長因子,PCNAとも陽性率が低く,悪性度が低いことが考えられた.

キーワード
表層拡大型胃癌, 深層拡大型胃癌, 成長因子, PCNA

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