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日外会誌. 94(8): 847-852, 1993


原著

再発甲状腺癌に対する再手術術式の検討

長崎大学 医学部第2外科

小原 則博 , 古井 純一郎 , 冨岡 勉 , 元島 幸一 , 角田 司 , 兼松 隆之

(1992年4月8日受付)

I.内容要旨
再発甲状腺癌の外科治療には未だ一定の方針はなく,縮小手術から拡大手術まで多くの方法が報告されている.今回, 1970年1月から1990年12月までの21年間に長崎大学第2外科にて経験した予後の明確な再発甲状腺癌26例を対象として再手術術式を検討した.
1)再発甲状腺癌に対する頸部郭清術式としては,「局所リンパ節郭清」が延べ19例,「保存的頸部郭清」が延べ24例,「広範囲頸部郭清」が延べ9例に施行された.再手術後の再々発率はそれぞれ14例 (74%), 15例 (63%), 2例 (22%) であり,「広範囲頸部郭清」が他の術式と比較して有意に (p<0.05) 再々発率は低かった.
2)再手術後の再々発部位は「局所リンパ節郭清」では郭清領域内再発が6例と最も多く,郭清領域内外5例を加えると14例中11例 (73%) が郭清部周囲のリンパ節に再々発した.「保存的頸部郭清」では郭清領域外の再々発が15例中10例 (67%) と最も多く,郭清領域内および郭清領域内外の再々発は5例 (33%) に認められた.「広範囲頸部郭清」では再々発した2例とも郭清領域内外に再々発を認めた.
3) 再発甲状腺癌の再手術時点での分化度と再々発率を検討すると,「局所リンパ節郭清」や「保存的頸部郭清」では高分化癌でそれぞれ8例中5例 (62%), 13例中4例 (31%) が再々発したが,低分化癌ではそれぞれ9例中8例 (89%), 10例中10例 (100%) と高頻度に再発を認めた.「広範囲頸部郭清」では低分化癌では5例中1例 (20%) のみの再々発であった.
以上の結果から再発甲状腺分化癌,特に低分化癌再発に対する再手術術式としては「局所リンパ節郭清」や「保存的頸部郭清」では再々発を防止しえず「広範囲頸部郭清」を選択すべきであると考えられた.

キーワード
再発甲状腺癌, 低分化甲状腺癌, 広範囲頸部郭清

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