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日外会誌. 94(8): 832-839, 1993


原著

腎移植後の大腿骨頭壊死発生と免疫抑制剤投与の関係についての検討(特に Cyclosporin A 投与との関係について)

東北大学 医学部第2外科
*) 花巻総合病院 外科
**) 仙台社会保険病院 外科

佐藤 耕一郎 , 里見 進 , 小熊 司郎*) , 大河内  信宏 , 岡崎 肇**) , 田口  喜雄 , 森 昌造

(1992年3月30日受付)

I.内容要旨
腎移植後の大腿骨頭壊死の発生因子を検討する目的で腎移植患者224人を対象とし,ステロイドとそれ以外の因子,特にCyclosporin A (CsA)投与について検討した.対象症例全体における検討項目は,体重,術前透析期間,ステロイド投与量である.又,免疫抑制剤の投与方法により,全対象をAzathioprine (AZ)+ Prednisolone (Pre) (AP群), CsA+Pre(CP群), AZ+CsA+ Pre (ACP群),その他の4群に分け,上記の検討項目にしたがって,検討を行った.さらに各群における壊死の発生率,壊死発生までの期間, CsA投与量と壊死発生の関係も併せて検討し,以下に示す結果を得た.(1)移植後2, 3, 4カ月の総ステロイド投与量が壊死群で有意に多く,移植後早期のステロイド投与量と大腿骨頭壊死の関係が示唆された.(2)移植後1カ月目の体重増加と大腿骨頭壊死に相関が認められ,早期の体重増加が壊死発生に関係していることが示唆された.(3)AP群では壊死症例が非壊死症例に比べてステロイド投与量と体重の増加量が有意に多かったが, CP群では両群間に有意差が認められずAP群とCP群の壊死発生機序は異なると思われた.(4)各群における壊死発生率はCP群で18%と高く,以下AP群9.3%, ACP群0%であった. CP群は,全く壊死発生のみられないACP群と比較すると, CsA投与量が多くステロイド投与量が少ないことと, CsA投与症例(CP+ACP群)における壊死症例と非壊死症例の比較において,移植後5, 6, 12カ月では壊死症例の方がCsA投与量/体重が有意に多いことから,大腿骨頭壊死とCsAとの関係が示唆された.以上より,大腿骨頭壊死にはステロイドに加え体重増加, CsA投与が深く関与していると考えられた.

キーワード
腎移植, 大腿骨頭壊死, 免疫抑制剤, Cyclosporin A

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