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日外会誌. 94(8): 791-795, 1993


原著

至適アルブミン添加保存液の再灌流時に及ぼす影響

久留米大学 医学部第2外科

久冨 光一 , 林田 信彦 , 田山 栄基 , 大橋 昌敬 , 磯村 正 , 小須賀 健一 , 大石 喜六

(1992年3月18日受付)

I.内容要旨
今回我々は,アルブミン添加保存液の再灌流障害抑制効果を検討する為,保存後の心機能測定とともに,心筋内カルシウム (Ca)及び過酸化脂質の代謝産物 (MDA;ma londialdehyde)を測定した.実験は,体重300g~450gのWistar系雄ラットの摘出心を用い,アルブミン濃度の異なる各保存液に4℃-6時間の単純浸漬保存を行った.保存液はEuro-Collins液を基調に,ウシ血清アルブミン添加の有無及び添加量にて,以下の4群を作成した. I群:アルブミン無添加(n=16), II群:アルブミン2 %添加(n=18), III群:アルブミン5%添加(n=17), IV群:アルブミン7%添加(n=18).また保存を行わず直ちに心機能評価を行ったものをコントロール(n=10)とした.その結果,心拍出量回復率(%)及び心筋内ATP(adenosine triphosphate)量は, II, III群が他群と比較し有意に高値を示し,再灌流15分後の心筋組織MDA(n mol/ g dry weight)及びCa(μ mol/ g dry weight)量も,各々I群279.3±38.1, II群243.3±86.5, III群217.1±106.6, IV群274.9±77.1, I群5.9±5.3, II群4.1±2.0, III群4.1±1.3, IV群4.9±1.2と,両測定値とも統計学的差は認められないものの,心機能及び心筋内ATP量の温存効果を認めたII, III群で,他群と比較し低値を示す傾向を認めた.この事は至適濃度のアルブミン添加が,再濯流時の障害因子と考えられる過酸化脂質の発生,及び心筋内へのCa移入を,ある程度抑制しえた可能性を示唆するものと考えている.

キーワード
アルブミン添加, 心保存, 再灌流障害, 過酸化脂質, 心筋内カルシウム


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