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日外会誌. 94(7): 745-750, 1993


原著

乳癌胸壁再発に対する胸壁全層切除術の成績と予後因子の検討

東北大学 医学部第2外科

大内 憲明 , 平川 久 , 阿部 基 , 古田 昭彦 , 原田 雄功 , 生垣 久範 , 森 昌造

(1992年3月16日受付)

I.内容要旨
乳癌胸壁再発に対する胸壁全層切除の治療成績と胸壁切除術後の予後因子について検討を加えた.対象は乳癌胸壁再発16症例である.手術は肋骨を含む胸壁全層切除術で, 6例に胸骨部分切除術を付加した.胸壁再建は広背筋または腹直筋皮弁を主に用い, さらに10例にMarlex meshによる補強を加えた.
16症例の初回術後健存期間(DFI)は平均87カ月, 再発時に縦隔浸潤および遠隔転移を9例に認めた.再発時の組織型では硬癌が多い傾向を示した.手術による胸壁欠損は50cm2以下2例, 100cm2以下9例, 100cm2以上5例であった.予後は3年生存率79%, 5年生存率57%と良好であった.
病変の波及度別に胸壁切除術後の予後を検討すると, 縦隔浸潤に遠隔転移を伴った群が局所単独再発群に比して, 有意に予後不良であった.また, 胸壁の治癒切除度と予後の検討では非治癒切除群が治癒切除群に比して予後が有意に低下していた.したがって, 縦隔浸潤または遠隔転移を伴い, 治癒切除の不可能な症例に対しての胸壁切除術の意義は乏しいと考えられる.
局所再発形式ではびまん型が腫瘤型に比して有意に生存率の低下傾向を示した.
更に健存期間(DFI)と予後の検討ではDFIが短いほど予後が悪く, とくにDFIが2年以下では3生率が33%であり, 2年以上の3生率88%と比較して有意に予後不良であった.
予後を左右する因子としてDFI, 治癒切除度および再発形式が重要と考えられる.

キーワード
乳癌, 胸壁再発, 胸壁全層切除


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