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日外会誌. 94(6): 645-647, 1993


症例報告

甲状腺悪性リンパ腫と鑑別診断の困難であった, 出産後無痛性甲状腺炎の 1例

信州大学 医学部第2外科
*) 信州大学 医学部第1病理
**) 飯田市立病院 外科

小松 誠 , 小林 信や , 伊藤 信夫*) , 宮川 信**) , 千賀 脩**) , 菅谷 昭 , 飯田 太

(1992年3月5日受付)

I.内容要旨
甲状腺悪性リンパ腫と鑑別診断の困難であった,出産後無痛性甲状腺炎の1例を経験した.患者は30歳女性. 9年前に頸部悪性リンパ腫に対し放射線照射が行われた.同疾患のフォロー中,出産を契機として発症した.慢性甲状腺炎の急性増悪に伴う甲状腺腫を認めた.本症例の発生機序はimmune rebound theoryにより説明することができる. リンパ球浸潤やリンパ濾胞の出現が著名な,免疫反跳現象の最も強い時期においては,臨床的にも細胞診においても甲状腺悪性リンパ腫との鑑別が困難であった.
甲状腺悪性リンパ腫の診断の際には,その合併病変である慢性甲状腺炎の免疫状態に伴う形態変化を考慮すべきであると思われる.

キーワード
甲状腺悪性リンパ腫, 出産後無痛性甲状腺炎, 慢性甲状腺炎

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