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日外会誌. 94(5): 516-525, 1993


原著

培養ヒト血管内皮細胞の増殖および PGI2 放出能に及ぼす血管内皮細胞増殖因子 (ECGF) の濃度低下と添加血清の影響
ーHybrid型人工血管臨床応用に向けての基礎的研究ー

東京大学 医学部第2外科

大島 哲

(1991年12月26日受付)

I.内容要旨
hybrid型人工血管ことにprelined graftが注目されているが, 臨床に応用するにあたりin vitroで添加された血管内皮細胞増殖因子(ECGF)のin vivoでの濃度低下が問題である.このECGF濃度低下につき, 培養ヒト血管内皮細胞を用いて増殖能と培養細胞の機能としてのPGI2放出能を検討した.更に, 培養液に加える血清を胎児ウシ血清とヒト血清で比較検討した.
培養ヒト血管内皮細胞は酵素法で得た. 8例では増殖曲線を検討した.即ち各1例につき20%胎児ウシ血清加培養液(ECGF濃度100μg/ml)で培養した第二継代のヒト血管内皮細胞をmicrowellに等分してECGF濃度をそれぞれ0, 0.1, 1, 10, 100μg/mlとした5グループと, 20%ヒト血清加培養液でECGF濃度を0,100μg/mlとしたもの計7グループで10日間培養し増殖曲線を得た.増殖速度はECGF濃度に比例し増加したが, 胎児ウシ血清で培養したヒト血管内皮細胞はECGF濃度0.1μg/ml以下では細胞が維持できなかった.これに対しヒト血清を用いるとECGF無添加でも細胞は維持増殖された(p<0. 001). 12例の培養ヒト血管内皮細胞ではPGI2放出能を検討した.血管内皮細胞採取後2等分しそれぞれ20%胎児ウシ血清, 20%新生児ヒト血清加培養液で培養した.第二継代の細胞をそれぞれ3群に分け培養液中のECGF濃度を0, 1, 100μg/mlとし, 48時間培養した.その後2U/mlのthrombinで10分間刺激しPGI2放出量をradioimmunoassay法で測定した.新生児ヒト血清で培養したヒト血管内皮細胞のほうが多くのPGI2を放出した.(ECGF濃度100μg/mlのとき胎児ウシ血清下19±11pg/105cells, 新生児ヒト血清下89±80pg/105cells, p<0.01)ヒト血清で培養したヒト血管内皮細胞はECGF無添加でも維持増殖しさらにPGI2放出能も良好であったことは, hybrid型人工血管(とくにprelined graft) の臨床応用の基礎的知見として有意義であると考える.

キーワード
ハイブリット型人工血管, ヒト血管内皮細胞, 細胞培養, プロスタサイクリン

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