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日外会誌. 94(5): 505-510, 1993
原著
Ⅰ期肺癌の外科治療成績決定因子の検討
I.内容要旨1973年1月~ 1989年9月の16年間に教室で経験したI期肺癌切除例288例について, T因子別, 組織型別, 性別に成績を比較して, その予後に影響を及ぼす背景因子について検討を行った.
I期肺癌全切除例の5生率は61.7%であった.このうちT1症例の5生率は74.5%であるのに対し, T2症例は53.8%であり有意差(p<0.05)を認めた.組織型別に5生率をみると, 腺癌が68.6%, 扁平上皮癌が55.1%であり有意差(p<0.01)を認めた.腺癌ではT1症例の5生率76.7%に対し, T2症例は55.0%であり, T1症例の予後が良好である傾向(p<0.1)を認めたが有意差には至らなかった.また扁平上皮癌でもT1症例59.5%, T2症例46.0%であり両群間に有意差を認めなかった.一方, T1症例においては, 腺癌(76.7%)と扁平上皮癌(59.5%)の間で5生率に有意差(p<0.05)を認めたが, T2症例においては, 腺癌(55.0%)と扁平上皮癌(46.0%)との間に5生率に有意差を認めなかった.男女別の5生率については, 男性が51.9%に対し, 女性は77.4%と有意(p<0.01)に女性の予後が良好であった.さらにT1症例については, 男性59.0%, 女性91.7%と5生率に有意差(p<0. 01)を認めたが, T2症例については, 男性47.4%, 女性65.8%と女性の5生率が良好である傾向(p<0.1)を認めたが, 有意差には至らなかった.核DNA量と予後との関連については, A型はD型より有意(p<0.05)に予後不良であり, また再発に関しても, A型はD型より有意(p<0.05)に再発率が高く, その再発部位も遠隔臓器により多く認めるという特徴が示された.
以上より, I期肺癌の外科的治療成績にはT因子が最も大きく関与し, 組織型では扁平上皮癌が, 性別では男性が予後不良である因子と考えられた.また, 核DNA量測定は手術術式の選択や予後推定の有用な指標になる可能性があると考えられた.
キーワード
肺癌, 外科治療, 予後因子
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