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日外会誌. 94(5): 501-504, 1993


原著

乳癌腫瘍部および正常乳腺部の間質中線維芽細胞によるコラーゲンゲル収縮効果

福島県立医科大学 外科学第2講座

浦住 幸治郎 , 君島 伊造 , 福島 俊彦 , 中山 浩一 , 鬼満 圭一 , 土屋 敦雄 , 阿部 力哉

(1991年12月9日受付)

I.内容要旨
腫瘍組織中の線維芽細胞がin vitroの実験で乳癌の増殖を促進していることを報告してきたが, 今回, 腫瘍組織中の線維芽細胞 (CaF) と正常乳腺組織中の線維芽細胞(NF)の増殖およびコラーゲンゲルの収縮率よりそれぞれの相違点を検討した.対象とする線維芽細胞は, 外科的に切除した標本の正常乳腺組織および乳癌組織より, コラゲナーゼ酵素処理によって, 得た. CaFはNFに比し早い増殖を認めた.コラーゲンゲルを再構成後のゲル上にCaFおよびNFを単層培養し, 培養1日目にゲルを浮遊状態とし, さらに2日後のゲルの面積より, ゲル収縮率を測定した.CaFを培養したゲルの収縮率が有意にNF培養ゲルの収縮率より大きかった.以上の結果より, CaFは前回報告した乳癌細胞の増殖を促進するGrowth factorの分泌作用のみでなく, 乳癌腫瘤形成および乳癌に特有の「ひきつれ」形成にも関与しているのではないかということが示唆された.今後, このような腫瘍線維芽細胞の増殖をコントロールすることが乳癌の治療に応用できる可能性も考えられる.

キーワード
乳癌, 腫瘍間質中線維芽細胞, 正常部乳腺組織中線維芽細胞, コラーゲンゲル, 細胞培養

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