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日外会誌. 94(5): 494-500, 1993
原著
膵癌術中照射療法に関する実験的研究
ー照射線量増大に伴う急性期変化についてー
I.内容要旨膵頭部癌に対しては膵頭十二指腸切除術を行った後に, 上腸間膜動脈(SMA)周囲のリンパ節転移および神経周囲浸潤に対し術中照射療法が行われている.しかし, 放射線感受性が低いといわれる腺癌に対しては現行の20~30Gyでは照射線量の不足が想定される.そこで, 十分な局所制御を得るために, より大量の線量を照射すべきと考え, 大線量照射時における血管および神経の組織学的変化, 栄養学的変化を明らかにする目的で以下の実験的研究を行った.
家兎36羽を線量別に30Gy群(n= 12), 50Gy群(n= 12), 80Gy群(n=12)の3群に分けた.開腹し, 人のSMAにあたるCMA(cranial mesenteric artery)根部を中心に直径3cm円筒型の照射筒で腸管を避けて7MeV電子線を照射後, 4週までのCMA分岐部腹部大動脈の組織学的変化を検討した.また, 血清生化学検査と体重測定, 便性の観察をした.
各群とも2/3以上で照射直後に内膜上皮の脱落を認めるが, 照射後1週以内に修復された.次いで, 照射後1週では各群で2/3以上に内弾性板の断裂, 分離が起こるが, その程度は照射線量に依存しなかった.中膜の変化は, 50, 80Gy群で2/3以上に出現し, 50Gy群では平滑筋細胞核が巣状に脱落する程度であるが, 80Gy群では中膜壊死が認められた.照射後4週までの観察期間では, 外膜の線維化や血栓形成は認めなかった.腹腔神経節については, 照射線量の増大に伴って特に80Gy群では早期から, 神経節細胞の脱落を認めた.便性, 体重の変化では, 80Gy群で下痢の頻度が3/12と高率で, 照射後4週でも体重が照射前値の97%と回復しなかった.血液生化学検査で各群に差は認めなかった.
以上の結果からSMA根部に対する術中照射の線量は, 80Gyでは照射後1週より大動脈中膜の壊死や腹腔神経節の損傷をきたすことから50Gy以内で増大可能であると考えられた.
キーワード
膵癌術中照射, 放射線障害
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