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日外会誌. 94(4): 394-399, 1993
原著
乳癌石灰化に関する PTHrP の免疫組織学的検討
I.内容要旨Parathyroid hormone-related protein (以下PTHrP) は, 腫瘍随伴性高Ca血症の主要な液性因子の一つであり, 肺癌や乳癌などで高率に発現していることが知られている. PTHrPの生理的作用として授乳期乳腺における乳汁中へのCa分泌に関与することが知られている.一方, 乳癌組織における石灰化機序に関しての詳細は未だ明らかではない.そこで, 今回私どもは, 乳癌組織における石灰化に対するPTHrPの関わりを検討するために, 以下の実験的検討を加えた. PTHrP(1 ~34)に対するモノクローナル抗体を使って, mammography (以下MMG) 上石灰化を有する乳癌症例と石灰化を認めない乳癌症例のホルマリン固定標本をABC法により免疫組織染色をおこない, PTHrP染色陽性度と石灰化及び組織型等との関連について検討した.その結果, MMG上石灰化を示す症例は17例全例PTHrP染色腸性であったが, MMG上石灰化を認めない症例は2例のみが陽性であった.PTHrP染色陽性度と乳癌の組織型との関連をみると, MMG上石灰化を有する乳頭腺管癌でPTHrP染色陽性度は高かった.硬癌ではPTHrP染色度は低かったが, 随伴病変としての硬癌部分では染色度は高い傾向がみられた. PTHrP染色陽性腫瘍細胞は多くはcytoplasmがhomogeneousに染色され, granuleを示すものは少なかった.また, この陽性細胞の染色度は組織型による差異を認めなかった.しかし, PTHrP染色陽性度とMMG上の石灰化個数, 腫瘍径, リンパ節転移度, ER, 及びPgRとの間には関連はみられなかった.以上よりPTHrPが乳癌組織においてCa代謝に関与し, 石灰化の発現に対して重要な働きをしていると考えられた.
キーワード
Parathroid Hormone related Protein(PTHrP), 乳癌, 石灰化
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