[
書誌情報]
[
全文PDF] (1611KB)
[会員限定・要二段階認証][
検索結果へ戻る]
日外会誌. 94(4): 341-351, 1993
原著
モノクローナル抗体 Ki-67を用いた食道癌の細胞動態解析に関する臨床的・実験的研究
I.内容要旨食道癌の細胞動態を検討する目的で, 細胞増殖期に出現する核抗原に対するモノクローナル抗体Ki-67 (Ki-67) を用いて免疫組織学的に検索し, その臨床的意義について臨床的・実験的に検討した.臨床的検討として, 1990年までに切除された術前無治療の胸部食道癌130例を対象とし, 手術時に摘出された食道腫瘍部及び非腫瘍部上皮の新鮮凍結切片を用いた.増殖期細胞の同定は, Ki-67を用いた酵素抗体間接法 (ABC法) で凍結切片を染色し, 核内が褐色顆粒状に染色された細胞をKi-67陽性細胞として判定した. Ki-67陽性細胞率は, 腫瘍細胞2,000個あたりのKi-67陽性細胞数を計測して算出した. Ki-67陽性細胞率と病理組織学的予後規定因子との関係について検討するとともに, いわゆる悪性度指標と考えられる癌細胞核DNA量, EGF receptor発現の有無, 癌局所のLeu7陽性細胞浸潤程度, および術後の生存率との関係についても検討した.その結果, 癌組織におけるKi-67陽性細胞は癌発育先進部に多い傾向を認めたが, 一方ではKi-67陽性細胞の発現が1%未満のKi-67陰性例を51例に認めた.また, 1%以上のKi-67陽性細胞を認めた癌腫の陽性細胞率と病理学的予後規定因子, 各種悪性度指標, および術後再発死亡との間には一定の関係は認められなかった.しかし, Ki-67陽性例と陰性例の2群に分けて術後生存率を検討すると, Ki-67陰性例の5年生存率は陽性例と比べて有意に良好であった.実験的検討では, ヌードマウス皮下に継代移植してきたヒト食道癌株を用いてその腫瘍の増殖能をKi-67を用いて測定し, 腫瘍の成長曲線と対比してみた.その結果, 従来より述べられているように腫瘍の成長と増殖との間には常に一定した関係は認めなかった.
以上より, 一時点の測定結果で腫瘍の増殖動態を把握することは困難であったが, Ki-67陽性細胞を認めた癌腫は再発死亡例が多く, 食道癌の悪性度指標となるものと考えられた.
キーワード
胸部食道癌, 細胞増殖動態, 腫瘍成長曲線, モノクローナル抗体 Ki-67, 術後生存率
このページのトップへ戻る
PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。