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日外会誌. 94(4): 334-340, 1993
原著
輸血後 GVHD様症候群の検討
I.内容要旨今回我々は,過去7年間に体外循環(ECC)下に手術を行い,GVHD (graft versus host disease) 様症状を認めた6例と,肝細胞癌の診断にて手術を行い,術後GVHDとなった1例を対象に,術後の臨床経過と細胞性免疫学的検討を行った.ECC使用例は大動脈弁置換術後2例,冠動脈バイパス術後3例,胸部大動脈人工血管置換術後1例で,何れの症例も術中術後に同種血輸血を施行した. HCC症例は術前に肝動脈塞栓術を行い,その後肝右葉切除術を施行し,術中術後に新鮮血1,000ml,凍結血漿4,400mlの同種血輸血を行った.各症例とも38℃以上の発熱を術後10日目前後より認め,それにともなう全身の紅斑,肝機能異常,食欲不振,下痢などの消化器症状,さらに顆粒球を主体とする白血球の減少,血小板減少にともなう出血傾向,意識障害をきたし,ECC症例では,術後17日から21日目に,HCC症例では術後29日目に死亡した.なお皮膚生検では全例急性GVHDの皮膚所見を呈していた.ECC症例では,CD3+,CD4+T細胞は術後1日目に低下したがその後回復し,とくに死亡前2日から3日に測定しえた症例4,5,6では,CD3+T細胞百分率の有意な上昇を認めた.なおCD4+,CD8+T細胞の比は,術後1週目より低下傾向を示し,症例5では術後14日目に0.18と極めて低い値を示していた. HCC症例も白血球数1,000/mm
3以下となった術後21日目の測定で,4/8比は0.7であり,さらに死亡前には0.2と低下していた.インターロイキン-2 (IL-2)産生能は,症例3,4とも,術後一貫して低値を示し,症状出現後測定しえた症例6,HCC症例も同様に低値を示していた.GVHDの発生に関わる宿主の免疫状態は,今日もなお解明されてはいない.しかし術前に測定しえた2症例のIL-2産生能が低値を示していた事,HCC症例に於いても,術前より免疫不全状態が生じていた可能性がある事より,術前からの細胞性免疫能の検討は,GVHD発生防止の一助となるものと考えている.
キーワード
GVHD, 体外循環循環下手術, 肝細胞癌術後, 細胞性免疫能
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