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日外会誌. 94(3): 269-276, 1993


原著

膵癌における術中照射療法の評価

大阪大学 医学部第2外科
*) 大阪大学 医学部放射線科

後藤 満一 , 門田 守人 , 左近 賢人 , 金井 俊雄 , 梅下 浩司 , 池田 恢*) , 森 武貞

(1991年10月16日受付)

I.内容要旨
我々は拡大膵切除に補助療法として術中照射療法を行ってきた.今回, その予後改善効果を非照射症例を対照として進展度別に比較し, 照射療法の集学的治療法としての意義を検討した.1975年から1991年までの膵癌切除症例72例を対象とした.Stage Iが6例, Stage IIが18例, Stage IIIが25例, Stage IVが23例含まれ, このうちStage IIIの4例, Stage IVの15例, 計19例に術中照射を施行した.術中照射は膵切除後, 膵剝離面を中心とした12×8cmの楕円形の領域に, 12Mevの条件で30Gyを行った.術中照射施行例のうち10例には術後, 総量22~48Gyの外照射を行った.
Stage Iの切除例では1例を除き他は全て生存し, Stage IIの切除例では中央値が908日で, 2例が5年以上生存した.Stage IIIの非照射例の中央値は310日で全例1, 000日以内に死亡しているのに対して, 照射例では4例全例(切除後3, 10, 15カ月, 4年9カ月)再発の兆候なく生存している.Stage IVの非照射例の中央値は300日, 照射例では235日と短くなったが有意差はなかった.一方, 非照射例は全て462日以内に死亡したのに対し, 照射例では3例であるが, これを越えて生存するものがみられた.
以上より, Stage IIIの症例においては切除術のみでは根治療法とはならず, 術中照射療法を併用することによって予後は著しく改善されることが明らかとなった.一方, Stage IVの症例においては術中照射療法に加え, 他の補助療法の導入が必要と考えられた.

キーワード
膵癌, 膵癌肉眼的進行度分類, 膵切除, 術中照射

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