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日外会誌. 94(3): 250-258, 1993
原著
硬変肝部分切除後の肝再生と反復全肝虚血(Pringle法) の影響に関する実験的研究
I.内容要旨硬変肝切除時の肝門部全血行遮断(以下Pringle法)の反復が肝部分切除後の肝再生に及ぼす影響を, チオアセトアミド投与による肝硬変ラットを用いて検討した.
実験群は, 硬変肝の虚血群と非虚血群, 及び正常肝非虚血群の3群とし, 虚血群では15分間の全肝虚血と15分間の再灌流を4回繰り返して行い, 総虚血時間60分間とした.いずれの群にも67%肝部分切除を行い, 肝切除後28日目までの肝再生と血液生化学検査の比較検討を行った.
硬変肝ラットでは, Pringle法を行っても軽度の腸管うっ血しか認めず, 正常ラットとは病態が異なっていた.術後1日目の生存率は3群のいずれも100%であり, 虚血操作と肝切除術は安全に行い得た.術後28日目の再生肝重量比は正常非虚血群が123.8±7.1%であるのに対し, 虚血群104.0±20.2%, 非虚血群95.6±8.6%と硬変肝群では正常肝より抑制されていたが, 虚血による再生の差は認めなかった.肝再生時の肝細胞DNA合成を肝細胞中のbromodeoxyuridine標識細胞の比率(LI)として算出すると, 術後1日目のLIが正常肝非虚血群は前値の182倍になったのに比し, 虚血群33.1倍, 非虚血群27.2倍であり, 硬変肝では正常肝に比しDNA合成の抑制を認めたものの虚血による差を認めなかった.血液生化学検査では硬変肝群は, 総蛋白値, アルブミン値は低値で経過したが, 虚血による差は認めなかった.
以上より, 硬変肝切除時に15分間虚血のPringle法を4回反復しても, 非虚血群に比較して肝機能検査はもとより長期の肝再生にも不利な点を認めず, 術中出血量を減少させ得ることから, 本法は術後早期のみならず長期の面からも有用であることが示された.
キーワード
肝硬変, 肝再生, 肝部分切除, 肝門部全肝虚血, BrdU 標識率
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