[書誌情報] [全文PDF] (1161KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 93(11): 1398-1409, 1992


原著

閉塞性黄疸時における胆道内endotoxinの血中への逆流による
endotoxinショック発来機序に関する実験的研究

広島大学 医学部第1外科学教室(主任:松浦雄一郎教授)(指導:横山  隆教授)  

村上 義昭

(1991年6月28日受付)

I.内容要旨
急性閉塞性化膿性胆管炎を代表とする閉塞性黄疸(閉黄)を伴う胆道系感染症時には,高率にendotoxin(Et)ショックを経験するが,閉黄時の胆道内より血中へのEtの出現によるEtショックの発来機序についての詳細な検討はいまだない.そこで,著者は,総胆管結紮切離後2週間目の閉黄犬を用い,臨床例で胆道内に検出される量のEt(10μg/kg)を胆道内に投与し,生理食塩水胆道内投与群を対照群として,閉黄時の胆道圧に近い圧(無負荷, 25cmH2O, 35cmH2O)を120分間胆道内にかけ,Etショックの発症の有無を各種パラメーターを用いて検討した.その結果,対照群,胆道圧無負荷群がEtショックを発症しなかったのに対し,胆道圧25cmH2O群・35cmH2O群は,平均動脈圧低下,白血球数減少,血中Et値上昇を示し, Etショックを発症した.そこで,Etの移行経路としての肝リンパの関与を検討するために,正常犬,閉黄犬に胸管(TD)ドレナージを施行後,上記の胆道圧下に同様の実験を施行した.閉黄犬におけるTD非ドレナージ群とTDドレナージ群の比較では,TDドレナージにより肝リンパがドレナージされているにも関わらず, TD非ドレナージ群と同様にEtショックを認め,各種測定項目もTD非ドレナージ群と有意の差を認めなかった.正常犬と閉黄犬のTDドレナージ群の比較では, TDよりの単位時間当りのEt流量および総Et流量は,正常犬がEt注入群で対照群に比し有意の増加を認めたのに対し,閉黄犬では有意の増加を認めなかった.
以上より,閉黄時には,臨床例で胆道内に検出される量のEtが胆道内に存在すれば,正常時に比べより低胆道圧下でEtショックが発症する.また,閉黄時の胆道内より血中へのEtの移行経路としては,血中へ直接に逆流する経路(cholangiovenous reflux)が主で,肝リンパ系(cholangiolymphatic pathway)は機能不全の状態にあることが示唆された.

キーワード
急性閉塞性化膿性胆管炎, 閉塞性黄疸, endotoxin ショック, cholangiovenous reflux, cholangiolymphatic pathway


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。