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日外会誌. 93(7): 757-765, 1992


原著

胸腺の加齢変化に関する免疫学的研究

鳥取大学 医学部外科学第2教室(主任:森  透教授)

福田 幹久

(1991年5月7日受付)

I.内容要旨
ヒト胸腺細胞の加齢による免疫能の推移について,開心術患者48例の胸腺組織から分離した胸腺細胞を用いて検討した.各年代ごとに胸腺細胞を抗CD8, CD4, CD3, CD1, HLA-DR, CD20抗体の6種類のモノクローナル抗体で染色し, flow cytometry及び酵素抗体法で解析し,同時にPHA, Con A, PWMを用いた幼若化反応を各年代ごとに比較検討した.
flow cytometryによる解析では, CD8の陽性比率は平均で0~10歳86.6%,11 ~30歳62.8%,31~50歳69.4%, 51歳以上62.3%と,加齢とともに減少し(p<0. 01),組織染色では皮質優位であった. CD4はその陽性比率が, 85.2%, 81.1%, 72.7%, 71.3%, CD1は73.1%, 64.0%, 53.8%, 46.3%といずれも加齢とともに減少し(p<0.01),いずれも皮質優位であった. CD3は46.5%, 54.0%, 52.4%,51.1%と有意の変動はなく(p>0.05)髄質優位であった. HLA-DRは1.65%, 3.45%, 6.63%, 9.05%, CD20は0.56%, 0.93%, 5.57%, 6.77%といずれも加齢とともに増加し(p<0.01)髄質に多く認められた. PHAに対する胸腺リンパ球幼若化反応は, SI値で,平均1.43, 6.22, 53.6, 48.0(p<0.05), Con Aは0.91, 1.19, 6.14, 13.2 (p<0.05), PWMは1.07, 1.40, 4.42, 8.22といずれも加齢とともに上昇した.
胸腺リンパ球サブセット及び幼若化反応の加齢による変化の数量化,及び免疫組織染色での細胞分布の比較は,加齢による胸腺リンパ球の免疫能の推移を示す基礎データになると思われる.同時にこのことは,重症筋無力症などの自己免疫疾患における胸腺リンパ球を年齢に対応させて比較する際の指標にもなると考える.

キーワード
胸腺, 加齢, flow cytometry, 免疫組織染色, 幼若化反応


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