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書誌情報]
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日外会誌. 93(7): 675-683, 1992
原著
食道癌患者の術後における急性相蛋白の変動
I.内容要旨術前栄養状態とリンパ節郭清に伴う手術侵襲の増加が術後急性相蛋白の反応に及ぽす影響を検討した.対象は右開胸によって切除した胸部食道癌33例であり,胃切除を施行した 6例を対照とした.術前栄養状態は%理想体重を指標とし 100%以上の 9例 (A群), 100%未満80%以上の 18例 (B群)および80%未満の 6例(C群)に分類した.手術侵襲に伴う変化は 2領域リンパ節郭清を行った19例と 3領域郭清を行った14例について検討した.急性相蛋白としては c-反応性蛋白 (CRP),フィブリノーゲン,α1アンチトリプシン,α1酸性糖蛋白およびハプトグロビンを測定した.術前栄養状態と急性相蛋白の関係では,%理想体重と α1酸性糖蛋白 (r=-0.42),プレアルブミンと α1アンチトリプシン (r=-0.55), レチノール結合蛋白と α1アンチトリプシン (r=-0.51)の間に有意の相関が認められた.また食道癌の進行度と α1アンチトリプシン (r=0.53)および α1酸性糖蛋白 (r=0.53)の間にも有意の相関が認められた.術後における CRPの推移を術前値を基準とした変化率でみると第 1病日において 3群間に有意差が認められ, C群の変化率が最も少なかった (p<0.01).フィブリノーゲンは実測値において第1病日にC群と A•B 群間に有意差が認められた (p<0.05).α1アンチトリプシンは変化率において第 1病日に A群と C群間に有意差が認められた (p<0.05).α1酸性糖蛋白は実測値では第 4病日以降に C群が低値で推移した.第14病日に A群と C群に有意差が認められた (p<0.05).急性相蛋白の術後変動を 2• 3領域郭清間で比較したが,両群間に有意差は得られなかった.胃癌に比ベ食道癌術後では急性相蛋白が高値で推移した.術前栄養状態不良例では術後早期の急性相蛋白の変動が少なく,急性相蛋白の術後推移に術前栄養状態が大きく関与していた.
キーワード
急性相蛋白, 栄養評価, 手術侵襲, 食道癌, 3領域リソパ節郭清
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