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日外会誌. 93(6): 599-606, 1992
原著
化学療法を併用した術前照射療法の直腸癌主病巣に対する効果の病理組織学的検討
I.内容要旨直腸癌に対する術前照射療法(42.6Gy)の有効性を評価するために腸管全層に対する癌腺管および線維化の割合を癌腺管率(CGR),線維化率(FR)と定義し,形態計測により定量的に検討するとともに,病理学的諸因子との関係について組織学的照射効果判定を基準に検討した.対象は術前(照射前)診断で癌腫が固有筋層を越えて浸潤していると診断された進行直腸癌症例で治癒切除された75例(非照射群39例,照射群36例)である.照射群の組織学的効果は非著効群(Grade 1a以下)17例,著効群(Grade 1b以上)19例で約半数が著効を示した.CGRは非照射群31.3±13.8%,非著効群16.6±10.0%,著効群3.6±2.6%で組織学的効果と相関を示した.FRは非照射群19.9±7.0%,非著効群34.4±8.8%,著効群38.6±8.9%で組織学的効果との相関は認められなかったが,照射群では非照射群に対し有意に上昇していた.切除標本の深達度はpmが非照射群2例5.1%,非著効群3例17.6%,著効群8例42.1%で照射による深達度の改善が示唆された.ew 5mm未満の症例は非照射群24例61.5%,非著効群6例40.0%,著効群6例31.6%であった.高度リンパ管侵襲例は非照射群30例76.9%,非著効群8例47.1%,著効群2例10.5%で,照射群とくに著効群において少なかった.高度静脈侵襲例は非照射群26例66.7%,非著効群11例64.7%,著効群7例36.8%で著効群で少なかった.主病巣の効果とリンパ節転移との関係は転移陽性例が非照射群20例51.3%,非著効群5例29.4%,著効群4例21.%で照射群とくに著効群で少なかった.さらにn
2以上の症例は非照射群11例28.2%,非著効群2例11.8%,著効群1例5.3%であり照射群において有意に少なかった.以上より,照射により癌腺管が減少し線維化が進むことが定量的に示され,非著効群と著効群では癌腺管率で有意な差を認めた.また,病理学的な再発危険因子は照射により改善がみられ,術前照射療法の有効性が示された.
キーワード
直腸癌, 術前照射療法, 再発危険因子, 癌腺管率, 線維化率
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