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日外会誌. 93(4): 369-376, 1992


原著

低酸素-再酸素化における血管内皮細胞由来フリーラジカルの産生および血管内皮細胞障害

帝京大学 医学部第2外科(主任:沖永功太教授)

西田 勝則

(1991年2月5日受付)

I.内容要旨
虚血・再潅流障害の発生におけるフリーラジカルの生成動態を検索する目的で, ヒト胴帯静脈より得た培養血管内皮細胞(EC)を低酸素ー再酸素化の環境化におき,同細胞からのフリーラジカル産生を経時的に観察するとともに,このときに生じた細胞障害について検討した. O2制御インキュベーターにより作製した低酸素条件下で2×105個のECを一定時間incubateし,その後ECを再酸素化状態においた.低酸素中および再酸素化後に上清中に放出されたスーパーオキサイドを,還元型チトクロームC量としてspectrophotometer(OD: 550nm)により経時的に測定した.その結果,再酸素化後3分で最大量のスーパーオキサイドの産生がみられた.チトクロームCの還元はスーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)でほぼ完全に抑制され, アロプリノールでは約80%の抑制が得られた.さらに,スコポレチン法により測定したH2O2は,スーパーオキサイドの産生からやや遅れて観察され, 5分後に最大量に逹した. この反応はカタラーゼにより完全に抑制された.次に,低酸素ー再酸素化に伴うECの細胞障害について, Fura-2 release assayとトリパンブル一色素排除法により検討した. Fura-2 release assayでは,低酸素ー再酸素化により再酸素化後3分で51.0±0.9(SE)%の細胞障害を認めた.トリパンブル一色素排除試験でもほぽ同様の結果であった.この障害はアロプリノール投与により約50%の抑制が認められたが, SOD, カタラーゼでは有意な抑制が得られなかった.以上,低酸素ー再酸素化により, ECから速やかに大量のスーパーオキサイド,過酸化水素の放出が認められ,また,この反応にはキサンチンーキサンチンオキシダーゼ系が強く関与していることが示された.同時に有意なECの細胞障害が観察され,これらフリーラジカルの産生が,再潅流障害の発生に強く関与している可能性が示唆された.

キーワード
再灌流障害, MNMS, ヒト血管内皮細胞, フリーラジカル, 細胞障害

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