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日外会誌. 93(2): 139-143, 1992


原著

大腸癌腫瘍形態よりみた血行性転移の検討
-特に pm 層穿破形態よりの検討-

金沢大学 医学部第2外科

神野 正博 , 黒阪 慶幸 , 小坂 健夫 , 山口 明夫 , 米村 豊 , 三輪 晃一 , 宮崎 逸夫

(1990年12月15日受付)

I.内容要旨
5年以上の経過観察が可能であった大腸癌の177例でpm層における腫瘍穿破形態から血行性転移の危険因子の検討を試みた.方法はHE染色によるプレパラートから腫瘍の最大割面を構築し,癌がsm層からpm層に入る部分の長さ(A) とpm層からss層へ出る部分の長さ(B)の比より先細り指数(A/B=TaperingIndex, 以下TI値)を算出し,これと大腸癌取り扱い規約による臨床病理学的因子およびDNAploidy patternとの相関を検討した. これより, TI値はリンバ節転移(n)を除いて, DNAploidyを含む臨床病理学的因子とは独立した因子であり,非転移例に比較して,血行性転移例では有意にTI値が低いことが知られた.さらにcut off値を結腸癌では1.3, 直腸癌では1.9とするとcut off値未満の症例では同時性,異時性を問わず血行性転移の可能性が高く,かつ予後も不良であり, n,ly, v因子等とともに血行性転移の可能性の予測に重要な因子となりうることが示唆された.すなわち, pm層穿破形態を客観的に数値化することにより, TI値の低い,すなわち裾広がり傾向にあるものでは血行性転移の可能性が高いことが示唆された.

キーワード
大腸癌, 血行性転移, 腫瘍形態, 先細り指数, DNA ploidy pattern

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