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日外会誌. 93(1): 16-25, 1992
原著
遊離小腸を用いたインスリン持続投与による血糖管理の基礎的検討
I.内容要旨遊離小腸を介して,insulin(INS)の持続的投与が経腸的に可能ならば,これまでの経静脈投与あるいは皮下注などに加え,新たなINS投与法となる可能性がある.雑種成犬を用いて上部小腸のTreitz靱帯より肛門側約10cmより約40cmを遊離し,両端を側腹部に開放固定したThiry-Vella loop (TVループ) モデルとTVループモデルの肛門側を回盲部末端に端側吻合し,内瘻化した空腸瘻モデルを作成後, streptozotocin(ST)を静注し, ST糖尿病成犬とした.これらの遊離小腸よりINSを持続投与して長期間の血糖管理の可能性を検討し,以下の結論を得た.
1. TVループおよび空腸瘻より,regular insulin (RI) とaprotinin(TR)を併用投与すると有意の血糖降下を示した.
2. TVループよりRIとTRの投与量を各々変えて投与すると,血糖降下の効果は総投与量よりも投与速度に依存した.
3. 空腸瘻よりRIとTRを7日間持続注入し,血糖(BS)値,尿糖(US)値, INS値,Glucagon(GLU)値,Cortisol(COR)値の変動(RI投与4日前,RI投与後1, 4, 7日目)を追うと,BS値は(208±27, 200±32, 202±19.8, 196±27.9mg/ dl), US値は(16.9±3.8, 16.5±2.3, 14.5±3.4, 13.1±3.5g/day),INS値は(15.1±2.9, 13.4±3.8, 10.6±2.7, 13.6±1.6μU/ml),GLU値は(84.2±17.4, 81.8±24.6, 67.7±2.3, 74.8±11.7pg/ml), COR値は(4.9±2.1, 4.0±1.3, 5.0±2.5, 3.1±0.9μg/dl) と推移し,RI投与前とほぼ同等なレベルを示した.
4. RIの血糖降下の効果は,併用投与する抗蛋白分解酵素剤を選択する事により,更に増強され得る事が示唆された.
キーワード
経腸投与, Thiry-Vella loop, 空腸瘻, インスリン, 抗蛋白分解酵素剤
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