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日外会誌. 91(6): 741-748, 1990


原著

実験的肺傷害時における多形核白血球の遊走性と活性酸素産生能の変化について

慶應義塾大学 医学部外科

堀之内 宏久

(1989年6月23日受付)

I.内容要旨
急性肺傷害時に多形核白血球が果たす役割を知るためにモルモットにエンドトキシンを経静脈的に投与して実験的肺傷害を発生させ,その急性期の血液中および肺洗浄液中の白血球数の変動,多形核白血球の遊走性の変化,および多形核白血球の活性酸素産生能の指標となる化学発光の変化を測定した.
その結果,モルモットにエンドトキシンを投与すると,1.血液中の白血球数は減少し,6時間後も低下していた.(無処置群5,800±1,400/mm3,6時間後2,400±1,000/mm3,p<0.01).2.気道内には侵襲を加えていないにもかかわらず肺洗浄液中の総細胞数は増加し,中でも多形核白血球の占める割合は有意に増加していた.3.細胞内に出現した多形核白血球の遊走性は無処置群に比べ充進しており(無処置群93±63cells/5視野,6時間後334±24cells/5視野,p<0.01),多形核白血球の肺胞腔内への移動は遊走性の充進が関与していると考えられた.4.肺胞内に出現した多形核白血球の活性酸素産生能は上昇しており,肺洗浄液中の多形核白血球のルミノール依存性化学発光は無処置群では1.89±0.94counts/cellであり,6時間後では59.2±49.1counts/cell(p<0.05)と有意の差を持って無処置群より高値を示した.これらの結果より,肺胞腔内への多形核白血球の移動には遊走性の元進が関与し,肺胞腔内の多形核白血球が活性酸素を生成して肺に傷害を与える可能性が示唆された.

キーワード
肺傷害, エンドトキシン, 多形核白血球, 遊走性, 化学発光

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