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日外会誌. 91(6): 661-666, 1990


原著

血清 CEA 値の経時的推移より解析される胃癌と大腸癌の発育,悪性度に関する研究

浜松医科大学 第1外科

梅原 靖彦 , 宮原 透 , 吉田 雅行 , 礒部 信一 , 大場 範行 , 原田 幸雄

(1989年6月13日受付)

I.内容要旨
術前から死亡まで観察しえた胃癌33例,大腸癌20例を対象に,血清CEA値の経時的変化を解析した.そしてlog CEAと時間との関係より個々のCEAダブリングタイム(CEA D.T)を算出し,これらと臨床病理学的背景因子との関連について検討を加え,以下の結果を得た.
1)術前から死亡までの期間におけるCEA D.Tは胃癌,大腸癌ともに一定しておらず,CEA D.Tは生涯変化していることが示された.2)CEA D.Tは,胃癌5~140日,大腸癌8~134日と広範囲に分布し,両腫瘍とも末期において短縮する傾向を認めた.3)背景因子としての年齢,性別,組織型の検討では,それぞれ統計学的有意差は認めなかったものの年齢では若年,性別では女性,組織型では低分化型腺癌においてCEA D.Tが短い傾向を認め,これらの因子は腫瘍の発育が速度に影響を与えていると思われた.4)胃癌の脾摘群と非脾群の比較で,非脾摘群の末期におけるCEA D.Tが有意差をもって短縮しており,腫瘍の発育に脾臓が関与していることが示唆された.5)胃癌においてCEA D.Tと生存日数とは正の相関(r=0.636,p<0.001)を認め,CEA D.Tが短いほど生存日数が短いことが示された.
血清CEA値の経時的解析は,個々の宿主と腫瘍の発育,悪性度との関連を考察する上で有用なものと思われる.

キーワード
CEA (carcinoembryonic antigen), ダブリングタイム, 胃癌と大腸癌の発育速度

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