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日外会誌. 90(12): 1976-1988, 1989


原著

胆道癌における癌関連糖鎖抗原の免疫組織化学的研究

岩手医科大学 医学部病理学第1講座(主任:矢川寛一教授)
岩手医科大学 医学部外科学第1講座(主任:斎藤和好教授)

佐々木 亮孝

(1989年1月10日受付)

I.内容要旨
胆道癌の細胞生物学的性状を知る目的で,胆道癌組織について癌関連糖鎖抗原(CA19-9,sialyl SSEA-1,NCC-ST-439抗原)およびCarcinoembryonic antigen(CEA)を免疫組織化学的に検討した.慢性胆嚢炎と正常胆嚢組織についても同様の染色を行い比較検討した.
胆嚢癌35例,胆管癌21例および慢性胆嚢炎16例,正常胆嚢3例を対象とした.材料はホルマリン液固定,パラフィン切片を用い,癌関連糖鎖抗原には,各々に対するモノクローナル抗体を用いて酵素抗体ABC法にて免疫染色を行った.CEAはNCA吸収ポリクローナル抗体を用いて酵素抗体間接法で染色を行った.
1)胆嚢癌における各種抗原出現率は,CA19-9 71.4%,sialyl SSEA-1 62.9%,NCC-ST-439抗原71.4%およびCEA 80.0%であった.胆管癌ではそれぞれ71.4%,52.4%,95.2%および85.7%であり,いずれの抗原も高率に発現していた.とくにNCC-ST-439抗原は,胆管癌で著明に出現率が高かった.
2)抗原の局在様式は,各種抗原によって一定の局在を示さず,症例により多様性が認められた.また,抗原の周囲間質への流出は,陽性細胞の出現程度の多寡に影響されていると考えられた.
3)いずれの抗原も,組織型および分化度の間には出現率に明らかな差を認めなかった.
4)組織CEA陽性例は,漿膜浸潤,浸潤増殖様式γ,および神経・脈管浸潤存在例に多く,高い悪性度を示すことが推定された.
5)慢性胆嚢炎組織では,sialyl SSEA-1が1例でのみ陽性であったが,その他の抗原は多くの症例で陽性を示した.また,正常胆嚢組織はいずれの抗原にも陰性であり,II型糖鎖であるsialyl SSEA-1はもっとも癌に高い特異性を示すことが示唆された.
以上より,上記の癌関連糖鎖抗原およびCEAは,胆道癌の診断に役立つとともに,糖鎖抗原をターゲットにしたモノクローナル抗体による治療への応用に有用であることが示唆された.

キーワード
胆道癌, 癌関連糖鎖抗原, Carcinoembryonic antigen (CEA), 免疫組織化学

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