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日外会誌. 90(10): 1786-1792, 1989


原著

Dimethylbenz (a) anthracene 誘発ラット乳癌に対する化学・内分泌療法の有用性についての検討

徳島大学 医学部第2外科

山本 弘幸 , 森本 忠興 , 門田 康正

(1988年11月22日受付)

I.内容要旨
化学・内分泌療法は,臨床の場でも広く行われているにもかかわらず,その有用性については,まだ,一定の見解がない.そこで,ホルモン依存性であるDMBA誘発ラット乳癌に対し,5-FUを用いた化学療法,TAMを用いた内分泌療法,これらを同時併用した化学・内分泌療法を行った.そして,抗腫瘍効果,ホルモンレセプター値の変化より,化学・内分泌療法の有用性について検討した.
有効率は,5-FU単独群,TAM単独群,5-FU・TAM併用群,それぞれ,60%,50%,62%であり各群間に差を認めなかった.腫瘍の縮小率は,5-FU単独群,TAM単独群,5-FU・TAM併用群,それぞれ,22±69%,20±54%,46±37%であり,各群間に差を認めなかった.治療後,ER値およびPgR値は,TAM単独群,5-FU・TAM併用群において有意に低下したが,5-FU単独群は,変化しなかった.また,有効例の治療前後のER値およびPgR値の差は,TAM単独群,5-FU・TAM併用群が,5-FU単独群に比べ著明に低下したが,無効例では,各群間に差を認めなかった.5-FU単独群と5-FU・TAM併用群は,抗腫瘍効果およびレセプター値の変化に差はなかった.これは,5-FUとTAMを同時併用した場合は,TAMが主に抗腫瘍作用を発揮したものと考えられ,期待された併用効果は認められなかった.

キーワード
化学・内分泌療法, ホルモンレセプター, DMBA 誘発ラット乳癌, 5-Fluorourasil, Tamoxifen

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