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書誌情報]
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日外会誌. 90(10): 1765-1773, 1989
原著
肝移植のための viability assay 法
ー摘出肝の低温持続灌流下における組織酸素消費測定の意義ー
I.内容要旨近年,欧米においては肝移植術は,末期肝疾患の治療法として確立されたが,術後のprimary graft nonfunctionは未解決な問題点として残されている.そこで,術前にドナー肝のviabilityの判定が可能であるかを種々のパラメーターについて検討した.明らかにviabilityの異なる温阻血時間0分(group 1, n=8),温阻血時間30分(group 2,n=7)の2群のイヌ摘出肝をORPH-2000Cを用い6℃で低温持続灌流した.パラメーターとして灌流液中の肝逸脱酵素(GOT, GPT, LDH),ビリルビン濃度,乳酸ピルビン酸比,ケトン体比,アンモニア負荷試験,組織流量,組織酸素消費について検討した.その結果,灌流1時間で組織流量は,group 1は33.4±11.8,group 2は15.3±2.6(ml/min/100g),組織酸素消費は,group 1は11.7±5.1,group 2は2.3±1.2(μmol/min/100g)であり両groupに有意差(p<0.01)を認めた.さらに,両groupの組織流量,組織酸素消費に差がみられることは,microangiography,および電子顕微鏡による検討からも裏付けられた.したがって組織流量,組織酸素消費はviabilityの指標として用いうることが示唆された.次に,低温持続灌流中のイヌ温阻血障害肝の組織酸素消費を測定した後,同種同所性に肝移植を行った(n=9).その結果,組織流量は生存群(n=4),肝不全群(n=5)でそれぞれ53.6±15.2,25.8±5.6(ml/min/100g),組織酸素消費はそれぞれ12.4±5.8,2.0±2.3(μmol/min/100g)であり,両群に有意差(p<0.01)を認めた.また,組織酸素消費が3.0(μmol/min/100g)以下のものは全例肝不全で死亡し,8.0(μmol/min/100g)以上のものは全例生存した.したがって組織酸素消費が3.0(μmol/min/100g)以下のviabilityの不良な摘出肝を排除することで,primary graft nonfunctionを避けることができるものと考えられる.
キーワード
viability assay, 肝臓移植, 低温持続灌流, 組織酸素消費, 組織流量
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