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日外会誌. 90(10): 1722-1731, 1989


原著

急性門脈遮断時および解除後の小腸組織障害に関する実験的研究
第二編:小腸フリーラジカルと脂質過酸化反応

愛媛大学 医学部第2外科学教室(主任:木村 茂教授)

上田 重春

(1988年10月26日受付)

I.内容要旨
肝移植術および門脈再建を必要とする膵癌や胆道癌手術などでは,門脈遮断を余儀なくされる.門脈遮断により腸管はうっ血し,漿膜下および腸管腔内に出血するとともに,小腸組織への酸素供給が変化し,小腸組織に障害が生じてくる.そこで,急性門脈遮断時および解除後の小腸組織障害における小腸free radicalと脂質過酸化反応,さらに小腸組織障害を軽減する方法について検討した.
ラットの門脈を肝門部で30分間遮断し,小腸free radical濃度(電子スピン共鳴法)と門脈血,動脈血,小腸組織中TBA(thiobarbituric acid)reactantsを測定した.1)小腸free radical濃度は門脈遮断により減少し,遮断解除後早期(10秒)に一過性に増加した.この増加はallopurinolにより抑制された.2)TBA reactantsの変動からみた脂質過酸化反応はα-tocopherolにより門脈遮断中の,allopurinolにより遮断解除後の脂質過酸化反応が抑制された.また,門脈圧の上昇を抑制する上腸間膜動脈の同時遮断や門脈一静脈系シャントの設置によっても脂質過酸化反応が抑制された.
以上の結果より,1)門脈遮断解除後早期の小腸free radicalの一過性増加がallopurinolにより抑制されたことより,遮断解除後のreperfusion injuryは,小腸組織中のxanthine oxidase系がその一因であると考えられた.2)α-tocopherolは門脈遮断中の,allopurinolは遮断解除後の脂質過酸化反応を抑制し,小腸組織障害の軽減に有効であった.3)門脈圧の上昇を抑制する上腸間膜動脈同時遮断や門脈一静脈系シャント設置によっても,門脈遮断時および解除後の小腸脂質過酸化反応が抑制され,小腸組織障害の軽減に有効であった.

キーワード
急性門脈遮断, 小腸障害, 脂質過酸化反応, free radical, superoxide

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