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日外会誌. 90(8): 1213-1225, 1989
原著
大腸癌の局所免疫に関する免疫組織学的研究
I.内容要旨大腸癌患者の局所の免疫応答の状態を特に液性免疫の面から検討するために癌周辺部および非癌部に浸潤する免疫グロブリン含有細胞(以下Ig含有細胞)および円形細胞を計測し,数量的に解析するとともに,それらの結果と予後に関連する諸因子(年齢,性別,肉眼型,腫瘍最大径,分化度,壁深達度,リンパ節転移,脈管侵襲,組織学的進行程度)との関係について比較検討した.材料:1985年~ 1987年に岩手医大第1外科で切除した大腸癌症例42例を対象とした.方法:Ig染色はパラフィン切片を用い,DAKO社製PAP Kit(K505)で酵素抗体PAP法により行った.計測方法は癌周辺部と非癌部の粘膜固有層で一定面積内(/0.025mm
3)のIg含有細胞数および円形細胞数を算定した.結果:1)IgA含有細胞は,癌周辺部(15.5±0.9個)の方が非癌部(34.1±1.2個)より少なく,IgG含有細胞は,癌周辺部(13.6±1.4)個の方が,非癌部(6.3±0.4個)より多かった.2)癌周辺部のIgG含有細胞は,直腸癌(9.1±1.2)が結腸癌〔右側結腸癌(15.6±2.6個),左側結腸癌(16.2±2.9個)〕より少なかった.3)癌周辺部のIgG含有細胞は,腫瘍最大径2.5cm以上5.0cm未満17.0±2.7個,5.0cm以上7.5cm未満12.9±1.5個,7.5cm以上10.0cm未満7.5±2.5個と,腫瘍の大きさが増すにつれて減少した.4)癌周辺部のIgM含有細胞は,n(-)群(7.1±0.9個)が,n
1(+)群(13.4±2.2個)・n
2(+)群(11.7±1.0個)に比べて,有意に少なく,リンパ節転移との関連性が示唆された.5)円形細胞浸潤は,癌周辺部(218.1±4.2個)の方が非癌部(132.3±2.4個)より多く,浸潤細胞の多くはリンパ球であった.6)限局潰瘍型(222.8±4.6個)の方が浸潤潰瘍型(192.1±10.5個)より癌周辺部の円形細胞浸潤は多数みられた.以上よりIg含有細胞は大腸癌の局所免疫に重要な役割を演じている可能性が示唆された.
キーワード
大腸癌の局所免疫, 酵素抗体 PAP 法, 免疫グロブリン含有細胞, 局所の液性免疫, 予後関連因子
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