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日外会誌. 90(7): 1110-1116, 1989


原著

Buerger 病に対する大腿ー脛骨・腓骨動脈バイパスの手術適応

名古屋大学 医学部第1外科

矢野 孝 , 塩野谷 恵彦 , 池澤 輝男 , 桜井 恒久 , 宮内 正之 , 向山 博夫 , 錦見 尚道

(1988年8月17日受付)

I.内容要旨
Buerger病(TAO)では動脈閉塞性病変が四肢末梢側に偏りやすく,下肢ではpedal archが閉塞していることが多い.そのため,run off不良という理由で下腿動脈へのバイパス術が躊躇される傾向にある.我々はTAOに対してpedal archの開存有無にかかわらず大腿の動脈がある区間開存していれば,大腿一脛骨・腓骨バイパス(F-Tバイパス)を行うという方針で23例23肢に手術を行い,3ヵ月開存率86.7%,1年77.3%,3年77.3%,5年77.3%であった.また,流出動脈(outflow vessel)がpedal archに直接接合していたものは3肢(13.0%)で,残りの症例は流出動脈とpedal archの間に閉塞性病変が介在するか,あるいはpedal archが造影されない症例であった.流出動脈がsolitarysegmentとなって開存している症例の開存区間を計測すると最短11.5cm,最長29.0cm,平均19.8±4.6cmであった.TAOのF-Tバイパスの特徴として流入動脈(inflow vessel)に浅大腿動脈の末梢端を使うことができることが多く,この吻合にはグラフトは流入動脈に総大腿動脈を使う吻合よりも短くてすみ,最短17.5cm,最長53cm,平均30.1±9.9cmであった.
以上の結果をふまえて,TAOの血行再建術の適応基準を次のように定めた.
1.血管造影で,下腿主幹動脈の1本でも12cm以上の区間が開存しておれば,それがpedal archに直接接続しているか否かにかかわらず,それを流出動脈としてF-Tバイパスを行う.
2.バイパスグラフトの中枢側吻合は,血管造影で浅大腿動脈に病変が認められなけれぽ,浅大腿動脈末梢端側に置いて,グラフト経路の短縮に努める.
3.足部以上の切断が必要と考えられる場合は,F-Tバイパスを行って数日ないし数週間経過を観察し,分界線が明確になってから二期的に切断術を行う.

キーワード
Buerger 病, 大腿ー脛骨・腓骨動脈バイパス, 自家静脈グラフト, 末梢 run off, pedal arch

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