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日外会誌. 90(7): 1087-1095, 1989


原著

閉塞性動脈硬化症に対する新しい血管形成術の検討

日本大学 医学部第2外科(主任教授:瀬在幸安)

河野 秀雄

(1988年8月29日受付)

I.内容要旨
末梢血管の動脈硬化性狭窄病変に対して,肥厚した内膜病変をカテーテル操作で直接切除する血管形成術を,実験的臨床的に行った.使用したカテーテルはSimpsonらの開発したPSAC(PeripheralSimpson Atherectomy Catheter)であり,その先端部分が金属性の円筒型ハウジングとなっており,一側の開窓部に捕らえた内膜病変を内蔵したカッターが切除する構造になっている.実験的に血管モデルにて切除効果について検討し,さらに臨床的に閉塞性動脈硬化症の腸骨大腿動脈病変に対し本法を施行した.血管モデルによる基礎的検討では,カテーテル操作に際して平滑な血管内面と十分な狭窄解除を得るには反復する操作が必要であり,また湾曲の著しい部分では操作困難であることが示された.臨床的には閉塞性動脈硬化症7例9病変(総腸骨動脈部2病変,外腸骨動脈部4病変および浅大腿動脈部3病変)に対し本法を行った.切除物が粥腫であるため塞栓症の発生を危惧して途中で中止となった1例と,病変部へのカテーテル進行が不可能だった1例の計2例を除き全例で狭窄度の改善が得られ,動脈解離や塞栓症等の合併症は認めなかった.切除物の処置のために操作上多少の煩雑さは伴うが,本法は臨床的にも安全かつ効果的であると考えられた.さらに本法を改良すべく接触型レーザープローブを内蔵したカテーテルを試作し実験的検討を行った.コレステロール投与による動脈硬化家兎大動脈を摘出し,これに試作したカテーテルにてNd-YAGレーザーを照射した.レーザープローブの直接的な照射に比べ高エネルギーを必要としたが,平滑で良好な処置面を得られた.レーザーの蒸散効果により操作が簡略化することが期待され,また穿孔の危険の少ないlaser angioplastyになり得ると考えられた.

キーワード
angioplasty, atherectomy catheter, laser angioplasty, 閉塞性動脈硬化症

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