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日外会誌. 90(7): 1057-1064, 1989


原著

腎性上皮小体機能亢進症における過剰,異所性上皮小体に対する術前画像診断

*) 掛川市立総合病院 移植外科
**) 名古屋第2赤十字病院 移植外科
***) 名古屋大学 第2外科

冨永 芳博*) , 田中 勇治**) , 打田 和治**) , 加納 忠行*) , 山田 宣夫**) , 河合 真千夫***) , 高木 弘***)

(1988年9月28日受付)

I.内容要旨
慢性腎不全に合併する高度な腎性上皮小体機能亢進症は上皮小体摘出術の適応となる.本疾患では,全ての上皮小体を確認することが,持続性上皮小体機能亢進症及び再発を防ぐ為にも重要である.過剰,異所性上皮小体は,全ての上皮小体の確認を困難にしている.術前画像診断にて,過剰,異所性上皮小体が確認できれぽ,確実で侵襲の少ない手術が可能となる.
術前画像診断を施行後,上皮小体全摘出後前腕筋肉内自家移植術を施行した腎性上皮小体機能亢進症132例を対象に,過剰,異所性上皮小体に対する術前画像診断の意義を検討した.術前画像診断は,CTscan,Echogram,201TICIと99mTcO-4のdouble scintigramを併用した.
異所性上皮小体は132例529腺中74腺14.0%に存在した.異所性上皮小体の内,最も高頻度に存在したのは胸腺舌部内であり57腺存在した.同部位の診断率はScintigramが最も優れていた.三者の検査を併用すると胸腺舌部内に存在した腺の73.7%,500mg以上の腺では91.3%が術前確認できた.甲状腺内には5腺存在し,CTが最も診断率が優れ,500mg以上の3腺はいつれも術前確認できた.甲状腺と気管の間には5腺存在し,CTが診断率が最も優れ,3腺にて術前確認できた.前縦隔には1腺存在し,持続性上皮小体機能亢進症を示し,再手術にて切除した.この上皮小体は再手術前のScintigram,CTにて部位確認できた.過剰上皮小体は5例に存在し,4例で初回手術時に5腺切除できた.いづれも1腺以上が異所性に存在し,術前画像診断にて5腺の存在を疑い過剰上皮小体を4例で初回手術時,1例で再手術時に切除できた.
術前画像診断にて三者を併用すると異所性に存在しても500mg以上の腺では,92.9%で術前診断可能であり,術前画像診断は,過剰,異所性上皮小体の確認にも極めて有用であった.

キーワード
腎性上皮小体機能亢進症, 異所性上皮小体, 過剰上皮小体, 術前画像診断

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