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日外会誌. 90(6): 933-940, 1989


原著

イヌ自家静脈内皮細胞による prelined graft の移植実験に関する研究

東京大学 医学部第2外科(指導:出月康夫教授)

進藤 俊哉

(1988年5月26日受付)

I.内容要旨
小口径人工血管の長期開存性を得るために,イヌの静脈内皮細胞を小口径人工血管にseedingして作成したprelined graftを移植する動物実験を行った.12頭のイヌより外頸静脈を無菌的に採取し,酵素法を用いて内皮細胞を得た.細胞培養にて細胞数を増やした後に,コラーゲンをコーティングしたダクロン人工血管(内径4mm,長さ10cm)にseedingし,更に培養を続けた後,prelined graftを試験管内にて作成した.これを,イヌの一側の大腿動脈に移植し,反対側にはseedingしていない人工血管をコントロールとして移植した.4週間後の成績で,seeding群では,8/12(66.7%)と高い開存率が得られたのに対し,コントロール群では,1/12(8.3%)であった.
回収標本の病理組織学的検討で,seeding群のグラフト中央部に内皮細胞の単層構造が認められたのに対し,コントロール群では,フィブリンと血球成分のみであった.自家静脈内皮細胞のseedingにより作成したprelined graftは,小口径人工血管の開存性を高める可能性が高いものと考える.

キーワード
小口径人工血管, 血管内皮細胞, endothelial seeding, prelined graft

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