[
書誌情報]
[
全文PDF] (2413KB)
[会員限定・要二段階認証][
検索結果へ戻る]
日外会誌. 90(6): 907-913, 1989
原著
腋窩リンパ節郭清からみた乳房温存手術の根治性に関する病理組織学的検討
I.内容要旨欧米では比較的早期の乳癌に対して,腫瘤摘出(Lumpectomy)に,腋窩リンパ節郭清,局所の放射線照射を併用する乳房温存手術が広く普及してきている.しかし,本術式の妥当性および適応をみる場合,局所の癌残存の問題と同時に腋窩リンパ節郭清に対する安全性をみておく必要がある.そこで,本研究では腋窩リンパ節郭清について,その郭清の程度から本術式の安全性と適応について検討した.
対象はStewart,Orrの皮切で定型的乳房切断術を行った原発乳癌15例である.腋窩下7cmの皮切で腋窩リンパ節郭清(Level I,II,III)を行い,定型的乳房切断術後にリンパ節および脂肪織の残存の有無をみた.リンパ節は個数,脂肪織は,(1)全く残存していない,(2)半分以上取り除かれているが,一部残存している,(3)半分以上が残存しているの三段階で検討した.なお,全例同一術者が行った.
腋窩下皮切で郭清されたリンパ節は10~32個(平均20.4個)で,level別ではlevel I 142個(平均9.5個),level II 113個(平均7.5個)level III 51個(平均3.4個)であった.定型手術後のリンパ節残存数はlevel I 0/142個(残存率0%),level II 0/113個(残存率0%),level III 3/54個(残存率5.6%)であった.
脂肪織の残存率をみると,A. Thoracodorsalis周囲は0%,A. Thoracica lateralis周囲は一部残存している6.7%,A. Thoracoacromialis周囲(胸筋間も含む)は一部残存している33.3%,鎖骨下Halstedは一部残存している60.0%,半分以上が残存している13.3%であった.
本術式はlevel IIIに関しては完全郭清は困難であったが,Level IIで脂肪織の一部残存するものがみられたものの,Level I,IIのリンパ節郭清に関してはほとんど問題がないことが明らかとなった.したがって,腋窩リンパ節郭清の面だけからみれば,非定型手術とほぼ同様な郭清が可能であり,本術式は比較的早期な乳癌に対しても適応できる可能性が示唆された.
キーワード
乳房温存手術, 腋窩リンパ節郭清, 乳癌
このページのトップへ戻る
PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。