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日外会誌. 90(5): 786-792, 1989
原著
胸骨正中切開による呼吸器手術
I.内容要旨呼吸器手術に対して胸骨正中切開が用いられた30例を以下の如く分類し,検討を加えた. I) 低肺機能肺癌症例. 4例,平均FEV
1.0は960cc (38%) で葉切除後(1カ月)では890ccとなり, 7.3%の減少に止った. II) 高度縦隔進展肺癌例. 8例,分岐部やSVCの合併切除, N
3の郭清,スリーブ切除等が行われた.腫瘍径が10cm前後に達した巨大腫瘍でも安全な大血管への到達が可能となった. III)心疾患合併同時手術例. 2例, 5歳児のファロー四徴症合併先天性気管狭窄例と62歳僧帽弁膜症合併肺癌例に対し,両例とも心内操作終了後にも体外循環を続け,各々15mmの気管狭窄部切除端々吻合,及び左上葉切除(T
2N
0M
0)が施行された.本手術には感染防止に細心の注意が払われ,前者ではイソジンガーゼとフィブリン糊を利用し,後者例では体外循環下の肺手術術野からの吸引血液を全て棄却した. 2例共順調に経過し術後2年健在である. IV)縦隔気管手術例. 3例,悪性腫瘍に対する2例と外傷性肉芽の1例に対し,各々4, 8, 4, リングを切除し,端々吻合を行った. V)両側肺病変,11例, i)転移性肺腫瘍6例, ii) 巨大ブラ4例,及び肺癌に他側腫瘤病変合併例1例. i) ii)の両疾患とも術前のCT検査は必須であり,転移巣が肺門部PAや気管支の背側にある場合,或いはブラがS
2やS
6に及び多方向から数個のstaplerが必要となる場合は後側方切開による異時性両側手術が第1選択となる.VI)その他の症例として前縦隔腫瘍を合併した肺癌例と側臥位のとれない肺癌例の各1例があった.
胸骨正中切開による前方からのアプローチはI), II), III), IV)で良い適応となった.そしてIII)では汚染防止に十分な注意を払う事,V)での選択は症例により慎重に決定されるべき事を強調した.
キーワード
胸骨正中切開, 呼吸器手術, 心肺同時手術, 低肺機能, 拡大手術
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