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日外会誌. 90(5): 767-779, 1989


原著

乳腺領域のリンパ節分類について
ーリンパ流に即した分類の試みー

東京医科歯科大学 第1外科

金子 慶虎

(1988年6月11日受付)

I.内容要旨
乳腺領域のリンパ系路を,より詳細かつ正確に把握する事により,各リンパ節群を区分し,乳癌手術におけるリンパ節郭清のための一助とした.
対象は実習用解剖体3体6側である.これを肉眼あるいは実体顕微鏡下に,錨子を用いてリンパ節およびリンパ管を可及的詳細に剖出した.この所見と,従来より使用されている諸家の分類とを考慮し,リンパ流に即した分類法を考案した.
結果は次の通りである.I.腋窩リンパ節.1.主群:1)外側乳腺リンパ節(外側胸動静脈の内側に沿うリンパ節で,大胸筋外縁付近に存在する).2)肩甲リンパ節(肩甲下動静脈に沿うリンパ節).3)上腕静脈リンパ節(上腕静脈に沿うリンパ節で,内側は肩甲下動静脈との交差で,交差部のリンパ節も含む).4)腋窩静脈リンパ節(腋窩静脈に沿うリンパ節で,内側は胸肩峰動静脈胸筋枝との交差とし,交差部のリンパ節は含まない).5)胸筋間リンパ節(胸肩峰動静脈胸筋枝に沿って存在し,大小胸筋間に認められる).亜型:上部胸筋間リンパ節(胸肩峰動脈の根部付近で,小胸筋の内側縁に存在する).6)中心腋窩リンパ節(腋窩の中央で,腋窩飾板の表面あるいは下面に存在する).7)鎖骨下リンパ節(胸肩峰動静脈胸筋枝より内側で,腋窩静脈あるいは鎖骨下静脈に沿うリンバ節であり,最も内側のものは鎖骨下リンパ本幹と連絡する).2.副群:1)乳腺傍リンパ節(乳腺外側の皮下に存在する).2)三角筋胸筋筋溝リンパ節(同名溝中に存在する).3)大胸筋鎖骨部リンパ節(同名筋背側に存在する).II.鎖骨上リンパ節(鎖骨下静脈の頭側で,肩甲舌骨筋の尾側に存在する).III.内胸リンパ節(内胸動静脈に沿って存在する).

キーワード
乳腺領域のリンパ節, 乳腺のリンパ節分類, 乳腺の解剖

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