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日外会誌. 90(5): 721-725, 1989


原著

補助手段として下大静脈内シャントチューブを用いた Chiari 病の直視下根治術

国立千葉病院 外科
*) 国立千葉病院 病理

鈴木 一郎 , 西沢 直 , 小林 純 , 白松 一安 , 寺島 雅史 , 高沢 博*)

(1988年6月28日受付)

I.内容要旨
我が国では極めて稀なChiari病の1例に対し直視下根治術を施行した.
症例は33歳の男性で,右肝静脈膜様狭窄,左及中肝静脈の走行異常を認めた.手術は出血量の軽減,良好な視野の確保,空気塞栓の防止,さらに肝庇護の目的で下大静脈内シャントチューブを作成し,これを右心房から下大静脈に挿入し,常温下に右肝静脈の膜様構造物を切除した.その直後,門脈圧は360mmHgから160mmHgに下降した.肝血流遮断は全く行なわず,この間の出血は全て体外循環吸引回路を用いて,このシャントチューブから右心房に還血した.術中の血行動態は安定していた.術後経過も良好であり,右肝静脈造影で狭窄部の解除が確認された.
病理組織学的には,切除した右肝静脈の膜様構造は一層の上皮に覆われ,静脈壁と同様構造を有し,先天性膜様狭窄と診断した.
肝は欝血性肝繊維症であった.

キーワード
Budd-Chiari 症候群, 肝静脈閉塞症, 補助手段

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