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日外会誌. 90(4): 615-621, 1989


原著

間歇性跛行肢の予後

愛知医科大学 第2外科
*) 名古屋大学 医学部第1外科

太田 敬 , 加藤 量平 , 数井 秀器 , 近藤 三隆 , 土岡 弘通 , 塩野谷 恵彦*)

(1988年4月8日受付)

I.内容要旨
閉塞性動脈硬化症に起因する165例207跛行肢(保存的治療69例87肢,血行再建術96例120肢)の肢ならびに生命予後を調査し,跛行肢に対する治療方針を検討することが本論文の目的である.発症から血管外科専門施設を初めて受診時するまでの臨床経過をみると,適切な指導や治療の施されていない跛行肢の24%に安静時痛,潰瘍・壊死への進行がみられ,また初診時に安静時痛,潰瘍・壊死を呈した肢の約60%に経過中,跛行症状の時期があったことから,跛行肢は放置されるべきではなく,適切な治療方針にもとついた管理・治療が重要といえた.軽症破行例に対しては保存的治療が,重症肢行例に対しては血行再建術が血管外科医により決定・施行されたが,約6年の追跡調査結果をみると,保存的治療の行われた跛行肢では症状改善はわずか16%にしかみられなかったが,悪化例はほとんどなく肢切断例もなかった.血行再建群の成績をみると,再建部閉塞率は25.9%,再手術率は19.6%,肢切断率は2.7%,suprainguinal領域再建術,infrainguinal領域再建術の5年再建部開存率はそれぞれ82.1%,65.7%,手術死亡率は2.1%であり,手術による遠隔期合併症死亡は3.3%であった.血行再建をうけた症例の75%は調査時まで症状の消失・軽快により,quality of lifeの向上を得たといえるが,更なる成績の向上が必要と考えられた.軽症跛行肢の予後は良好なことから,軽症例には経過観察を条件にまず保存的治療が選択されるべきと考えられ,安易な解剖学的修復のみを目的とした血行再建術は慎むべきと考えられた.また跛行症例の約30%は5年以内に死亡し,そのうちの60%は心・脳血管障害によるという事実は,肢のみならず他臓器の動脈硬化性病変に悪影響を及ぼす因子の治療も極めて重要なことを示唆しているものと思われた.

キーワード
間歇性跛行, 肢の予後, 保存的治療, 血行再建術, 手術適応

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