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日外会誌. 90(4): 556-565, 1989
原著
持続的局所熱希釈法を用いたヒト門脈血流量測定に関する研究 (第3報)
ー肝切除後の全身および門脈血行動態に及ぼす Dopamine の効果ー
I.内容要旨肝切除の施行された19症例の術後第3病日にDopamine 3μg/kg/minの投与を試み,全身および門脈血行動態に及ぼす効果を検討した.全身血行動態はSwan-Ganzカテーテルを通じて,また門脈血行動態は術中に膀静脈より門脈本幹内に挿入留置されたGanzカテーテルを用いて持続的局所熱希釈法により検索された.さらに肝切除35症例に対しては術直後より,また肝切除後肝不全7症例では肝不全徴候出現時よりそれぞれDopamineの少量持続投与を施行し,その臨床的効果を検討した.
肝切除後の全身血行動態はhyperdynamic stateを呈していたが,Dopamineの投与により心拍出量は11.2%程度増加したものの,その他のパラメーターにはほとんど変化がみられないためDopamineの少量投与は安全であると考えられた.肝切除後の門脈血行動態はhypodynamicであったが,Dopamine投与開始30分後,門脈血流量と門脈圧は投与前値に比し平均35%および12%有意に増加し,門脈床抵抗は逆に平均14.5%減少,投与中止30分後にはそれぞれ投与前値に復した.またDopamine投与により門脈血酸素分圧は増加し,門脈血流量の増加と相乗して,門脈血による肝への分時酸素供給量は投与前値に比し平均49.1%増加した.これらの作用機序として,門脈血流量の心拍出量に対する分配率の増加,動脈門脈血酸素含量較差の狭小化および腸間膜血管抵抗の減少が門脈床抵抗の減少に比し著明であったこと等よりspecific Dopamine receptorを介する腸間膜動脈血流量の選択的増加が主体をなすものと考えられた.
一方,肝切除施行42症例に対してDopamineの少量持続投与を行ったところ,術後肝不全7例中5例では臨床像の著明な改善が得られ,また予防的投与の行われた35例では肝不全の発症はみられなかった.
したがって肝切除の術後管理上,Dopamineの少量投与は術後肝不全の予防と治療に有用であると思われた.
キーワード
Dopamine, 肝切除, 肝不全, 門脈血行動態, 全身血行動態
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