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日外会誌. 90(3): 434-439, 1989
原著
先天性気管狭窄症の治療および手術適応
ー13例の治療経験をもとにー
I.内容要旨昭和45年から61年3月までに神奈川県立こども医療センターで経験した先天性気管狭窄症は,13例であり,併存疾患として,pulmonary artery sling(PA sling)5例(先天性心疾患1例を含む),先天性心疾患4例,脳萎縮1例,十二指腸閉鎖根治術後1例,併存疾患なし2例を認めた.狭窄度の一つの指標として,気管内腔の,狭窄部横径と正常部最大横径の比(以下狭窄比)を,胸部単純写真,気管造影または剖検より求め,retrospectiveに手術適応について検討した.
狭窄比は,0.14~0.50(平均0.35±0.13SD)であり,0.4未満が6例,0.4以上7例であった.狭窄比0.14の2例に対し,狭窄部切除+気管端端吻合を施行し,術後症状は消失した.併存PA slingに対し気管圧迫解除を目的に肺動脈転位術を施行した3例中,狭窄比0.49の1例は生存し喘鳴改善したが,狭窄比0.20,0.30の2例を,術後呼吸不全で失った.併存先天性心疾患に対し根治術を施行した4例中,狭窄比0.41,0.46,0.49の3例は,気管再建術を要さず生存したが,0.36の1例は術後呼吸不全で遠隔死し,剖検でPA slingの併存が判明した.保存療法を行った4例中,狭窄比0.40,0.44,0.50の3例は,成長とともに症状軽快したが,狭窄比0.25の1例は入院時より呼吸不全が強く手術に至らず死亡,剖検にてPA slingの併存が判明した.
即ち,狭窄比が0.4以上の場合,PA slingを伴わない例は,保存療法で症状改善,PA slingを伴う例は,肺動脈転位術のみで改善,また先天性心疾患を伴う例では,根治術は比較的安全に行われた.一方狭窄比が0.4未満の場合には,気管再建術の適応であり,特にPA slingを伴う例は,肺動脈転位術+気管再建術,また先天性心疾患を伴う例では,心根治術+気管再建術の適応があると考えられた.先天性気管狭窄症の治療にあたっては,症状,併存疾患,狭窄型,狭窄比をもとに,最適の治療法を選ぶことが重要と考えられた.
キーワード
先天性気管狭窄症, 気管再建術, 狭窄比, Pulmonary artery sling, 肺動脈転位術
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