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日外会誌. 90(3): 423-428, 1989
原著
バセドウ病の外科的治療成績に関する検討
I.内容要旨教室において1970年から1983年までの14年間に初回手術を施行した・ミセドウ病患者513例について外科的治療成績を検討した.まず513例を第1期(1970~1974年),第2期(1975~1979年),第3期(1980~1983年)の3期に分けて,残存甲状腺重量の変遷と術後合併症の頻度を比較した.つぎに,術後外来診察および甲状腺機能検査を行うことが出来た302例について,残存重量別,総重量別,時期別の術後遠隔成績を検討し,さらに術後再発までの期間を調査した.
甲状腺残存重量が8g未満のものは,第1期では242例中75例,31%であり,第2期では175例中86例,49%,第3期では96例中82例,85%と残存重量は最近減少の傾向にあった.テタニーおよび反回神経麻痺等の術後合併症は3期の間で差はなく,残存重量とは直接関係ないと考えられた.
残存甲状腺重量別の術後遠隔成績では,機能正常例と潜在性機能低下例をあわせて寛解として扱ったが,残存重量4g以上8g未満の症例において寛解率79%ともっとも高率であった.また,残存重量が増加するにしたがって再発は増加し,残存重量が減少するにしたがって機能低下は増加した.
甲状腺総重量と術後遠隔成績では,60g未満の症例は,60g以上の症例に比べて高い寛解率が得られた.時期別の術後遠隔成績では,残存重量が減少した第3期では,正常は47%と最低であったが,寛解率は74%と他の時期に比べて差を認めなかった.
術後再発までの期間では,一定の傾向は認めなかったが,術後10年前後の晩期にも再発を認めた.
以上より,バセドウ病の術後再発を左右する因子としては残存重量がもっとも重要で,標準的残存重量は4g以上8g未満が望ましいと考えられた.術後再発は晩期でもみられるため,遠隔期においても定期的な経過観察が必要と考えられた.
キーワード
バセドウ病, 甲状腺亜全摘, 残存甲状腺重量
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