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日外会誌. 90(3): 385-395, 1989
原著
肝切除術後のグルカゴン・インスリン療法におけるラット肝臓核内 poly (ADP-ribose) 合成酵素活性の変動
I.内容要旨ラット肝部分切除後にグルカゴン・インスリン療法が,肝細胞核内poly(ADP-ribose)合成酵素活性に与える影響について検討した.ラットに68%部分肝切除術を行い,肝切群と肝切+グルカゴン・インスリン投与群(GI群)を作成し,これらの肝細胞核内poly(ADP-ribose)合成酵素活性を測定した.術後最初の本酵素活性のピークは,肝切群では術後5日目に354±44pmole/mg/min,GI群では術後2日目に242±46pmole/mg/minと,GI群に早期に現われた.GI群では7日目に本酵素活性は,121±12pmole/mg/minと最低値を示した後再上昇して,14日目220±31,21日目224±27となり全体として二峰性を示した.とくに21日目では肝切群に比べて有意な高値(p<0.01)を示した.肝重量再生率から,GI群では肝切群に比べて7日目以降にも再生が促進されていることが認められた.組織蛋白量当りのDNA量は両群とも肝切後7日目まではpoly(ADP-ribose)合成酵素活性と同様の経過をたどった.それ以後は両群ともに有意な上昇は認められなかった.一般肝機能検査では,特にGOT,GPT,LDHで術後早期に,GI群では肝切群に比べて有意に低値を示し,GI療法の肝細胞傷害抑制効果の存在が示唆された.血糖値はGI群において術後1日目に低血糖が出現したが,その後徐々に回復し,14日目以降に完全に回復した.KBRは,本酵素活性の変動とは逆に動く傾向がみられた.GI群では術後5日目に肝切群に比べて有意に高値を示した.
以上のことから,ラットの部分肝切除後早期には,GI療法はpoly(ADP-ribose)合成酵素活性を早期に上昇させてDNA合成を促進し,7日目以降は,DNA量には変化のない肝再生促進効果のあることが示唆された.
キーワード
ラット肝切除, Poly (ADP-ribose) 合成酵素, 肝再生, GI 療法, KBR
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