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日外会誌. 90(2): 298-305, 1989


原著

新鮮同種大動脈弁による大静脈弁に関する実験的研究
ー第1編 血行動態及び心血管造影による検討ー

東京女子医科大学日本心臓血圧研究所 循環器小児外科

石原 和明 , 東舘 雅文 , 原田 順和 , 河田 政明 , 今井 康晴

(1988年3月25日受付)

I.内容要旨
雑種成犬を用いて同種大動脈弁の大静脈弁としての可能性を研究した.予備実験とし冷凍保存したバルサルバ洞付き同種大動脈弁を上大静脈に縫合間置,三尖弁閉鎖不全を作成し同種大動脈弁の大静脈弁としての機能を検討した.次に無菌的に取り出した新鮮同種大動脈弁を予備実験と同様に他の実験犬の上大静脈に直ちに縫合間置し,移植した新鮮同種大動脈弁の上大静脈弁としての機能を経時的に心臓カテーテル検査と心血管造影により検討した.
1)冷凍保存したバルサルバ洞付き同種大動脈弁は移植直後には上大静脈内で開閉することが確認でき,逆流防止を目的に大静脈弁として使用できる可能性が示唆された.
2)新鮮同種大動脈弁は移植後2ヵ月までは大静脈弁として十分に機能するが,3ヵ月後から心血管造影により逆流と狭窄像が認められた.しかし心臓カテーテル検査では移植された同種大動脈弁による有意な圧較差は認められなかった.
3)血栓塞栓症は抗凝固療法なしでも移植後6ヵ月間は認められなかった.
4)以上よりバルサルバ洞付き新鮮同種大動脈弁は大静脈弁として有効であると考えられた.

キーワード
同種大動脈弁, 大静脈弁, バルサルバ洞, 三尖弁閉鎖不全

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