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日外会誌. 90(2): 258-266, 1989


原著

肝内結石の生成と胆汁中糖蛋白質の意義

弘前大学 医学部第2外科

佐々木 睦男 , 森 達也 , 高橋 賢一 , 福嶋 貴 , 伊坂 直紀 , 今 充 , 小野 慶一

(1988年4月2日受付)

I.内容要旨
肝内結石症(本症)10例と対照(コレステロール系胆嚢結石症,胆嚢ポリープ)20例についての肝胆汁の糖蛋白量を生化学的手法により分析し,以下の結果を得た.
1)胆汁をアセトンおよびエーテルで処理後減圧乾固して得られた脱脂肝胆汁粉末の収量は本症では対照の約2.5倍であり,定量により胆汁中の蛋白質および中性糖は本症では有意(p<0.05)に増加していた.
2)SDS-ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)による検討では,本症および対照ともほぼ類似した泳動パターンを示したが,両者の相違点は本症では染色性が濃く,かつ原点(Vo)付近に濃染される太いバンドが特徴的であった.
3)ゲル濾過法によって分画した所,両者ともVo付近の高分子領域と,Vt付近の低分子領域にそれぞれピークが認められ,低分子画分についてみると本症では対照に比較し量的な増加を認めた.本症高分子画分は,中性糖含有量が多く,またテーリングも見られ,多分散系を示していた.このことより本症高分子画分は,低分子糖蛋白質のサブユニットが非共有結合で重合したポリマーである可能性が強く疑われた.
4)化学組成についてみると本症ならびに対照の低分子画分ではアスパラギン酸とマンノースの含有量が多いことから血清型糖蛋白質が主体を示していた.一方,本症高分子画分の糖分析ではガラクトサミンを含み,フコース含量が高く,また,アミノ酸分析ではセリンとスレオニンの占める割合が多いこと,さらにシアル酸の増加が認められた.これらのことから本症では高濃度にシアロ糖蛋白質(ムチン型)の出現することが判明した.

キーワード
肝内結石, 糖蛋白質, シアロ糖蛋白質, ムチン, SDS-PAGE

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