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日外会誌. 90(2): 228-242, 1989
原著
肝切除後における肝循環動態および肝酸素需給動態に関する実験的研究
I.内容要旨肝切除後の肝循環動態の変動は肝不全の発生や肝再生に直結した重要な問題である.肝切除後残存肝の肝循環動態と肝酸素需給動態を明らかにし,さらにこの病態を改善する目的でdobutamine,dopamine,DBcAMP,SS-094を投与しその効果につき実験的に検討した.雑種成犬を用い単開腹群,30%肝切除群,70%肝切除群と,70%肝切除後にdobutamineを投与したDOB群,dopamineを投与したDA群,DBcAMPを投与したDBcAMP群,SS-094を投与したSS-094群の7群を作成した.各実験犬について肝切除前と肝切除直後,3,6,9時間後にに肝動脈血流量,門脈血流量の測定と動脈血,門脈血,肝静脈血の血液ガス分析とラクテート濃度を測定した.これらより肝循環動態と肝酸素需給動態を算出した.
肝切除後の肝血流量は肝切除量に相応して減少したが,単位肝重量当たりの肝血流量は増加した.肝酸素消費量も同様に減少したが単位肝重量当たりの肝酸素消費量は特に大量肝切除後において増加し,肝酸素摂取率の上昇傾向と肝乳酸処理能の低下を認めた.
70%肝切除後にdobutamine,dopamine,DBcAMP,SS-094を投与するとそれぞれ肝動脈血流量,門脈血流量が増加し,肝分時酸素供給量が増加した.そしていずれの薬剤も肝循環改善,肝酸素需給バランスの正常化と肝乳酸処理能の改善を認めた.したがってこれらの薬剤は大量肝切除後残存肝の循環動態および代謝を有利とするものと考えられた.
キーワード
肝切除術, 肝血流量, 肝酸素需給動態, dobutamine, dopamine
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