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日外会誌. 90(1): 59-63, 1989
原著
胃癌手術における血液凝固線溶系および創傷治癒因子
I.内容要旨胃癌患者14例を対象として手術前後の血液凝固線溶系,創傷治癒因子の変動を調査した.さらに健常者8例,胆石,子宮筋腫患者16例を対照群として比較検討した.術前,術後の2回採血しFibrinopeptide A(FPA),Fibrinopeptide B
β15-42(FPB
β15-42),Fibronectin(FN),活性凝固第XIII因子(XIIIa),α
2plasmininhibitor(α
2PI)の各因子を測定した.
1)FPA(p<0.05),FPB
β15-42(p<0.001),FPA/FPB
β15-42(p<0.05)と術後いずれも有意に上昇した.
2)FN(p<0.001),XIIIa(p<0.05),α
2PI(p<0.001)と術後いずれも有意に低下した.
3)健常者と比較するとFPA(p<0.005),FPB
β15-42(p<0.01)と両ペプチドとも胃癌患者で有意に高値となった.
4)胆石,子宮筋腫患者と比較すると術前FPA(p<0.05)のみ胃癌患者が有意に高値となった,他は術前,術後とも胃癌患者が高値をとる傾向にあった.
5)FN-α
2PI(r=0.59,p<0.001)は有意の正の相関関係を認めた.
胃癌患者は術前よりThrombin(Thr)活性の亢進があり手術操作によりThr活性はPlasmin活性を上回り上昇したが,これは生理的止血創傷治癒過程によると考えられ,手術侵襲が大きくなるとこれらの活性も高値となった.FNの減少は損傷組織部位への沈着および消費が主因と考えられた.
キーワード
胃癌手術, Fibrinopeptide A, Fibrinopeptide B β15-42, Fibronectin
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