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日外会誌. 89(11): 1850-1859, 1988


原著

ラット遊離有茎皮下埋没脾を用いた門脈血中内因性抗腫瘍効果誘導の試み
-転移性肝癌治療における実験的検討-

弘前大学 医学部第2外科学教室(主任教授:小野慶一)

藤井 昌彦

(昭和61年11月7日受付)

I.内容要旨
脾のもつ潜在的免疫活性機能を効果的に賦活させ,門脈血中への種々の抗腫瘍効果を誘導する目的において,遊離有茎脾皮下埋没ラットを作製し, biological response modifier (BRM)を脾内へ連続的に投与した. BRMとしては内因性tumor necrosis factor(TNF)産生の観点よりlipopolysaccharide(LPS: E. coli. 026: B6), OK-432及びBCGを用いた.
BRM連続脾内投与群では対照群に比して門脈血血清中のTNF及びinterferon(IFN)活性が有意(p<0. 05)に上昇し, さらに脾細胞及び門脈血中単核細胞の抗腫瘍活性も有意の上昇が認められた.病理組織学的にも中心動脈周囲リンパ球鞘及び組織球の著明な増生が認められた.
一方,同様のプロトコールにおける静脈内投与群及び腹腔内投与群との投与経路の差異による抗腫瘍効果の比較検計においては,脾内BRM投与群においてより効果的な各因子の活性上昇が認められた.
さらにAH60C細胞の門脈内投与により作製した実験的転移性肝癌モデルに対して脾内BRM連続投与を施行しその延命効果につき検討を加えた.定量的肝転移の作製が可能である本モデルに対し,微小転移巣に対する抑制効果をみるために,脾内BRM投与をAH60C移植後3日目より施行したところ,対照群に比して有意の延命効果が認められた.
以上より,BRMの新しい投与経路としての脾内投与は種々の免疫機能賦活作用を有しており,ことに転移性肝癌に対する予防的補助療法として,多面的,相乗的な抗腫瘍効果を十分期待し得る方法であることが示唆された.

キーワード
biological response modifier (BRM), 脾内投与, tumor necrosis factor (TNF), ラット, 実験的微小肝転移


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